2021年4号「技能と技術」誌306号
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〈脚注〉流れ型の薄い切り子を出しながらこれを削っておられた。生野先生の長年の技能技術の開発の歴史の一端を伺うことができる作品である。【先生の遺作の作品;瓢箪から駒】生野先生は,それを見る受講生たちが機械加工に興味を持つようにシャレの効いた作品をたくさん作られた。ひょうたんの中に10mm程度のかわいらしいひょうたんがコロコロ入っている。【先生の未完の遺作;アクリル角棒】-21-【啐啄同時;そったくどうじ】 学ぶ者と指導者の呼吸がぴったり合うこと。 「啐」は,雛がかえろうとするとき,殻の中で泣く声のこと。「啄」は,親鳥が卵の殻を外からつついて,雛が出てくるのを助けること。弟子が悟りを開くまであと一歩というとき,師匠がすかさず指導して悟りを得られるようにすることをいう。【九仞の功を一簣に虧く】 山を為つくるに九仞なるも,功を一簣に虧く(九仞の盛り土を造るときに,最後のもっこ一杯分を残してやめてしまっては,造り上げたという功績は得られない)」とある。「九仞」とは,当時の尺度で,約18メートル。「簣」は,土などを運ぶための道具。もっこのことです。生野先生は切削加工での鏡面加工を得意とされていた。切削だけで恐ろしいほどの透明感を蓄えた未完のアクリル棒。先生はこのアクリルを使って何を作ろうとされたのだろうか。【事務局からのおしらせ】文中に出てくる「左甚五郎(ひだりじんごろう)」のお話を次号よりシリーズ掲載いたします。

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