2021年4号「技能と技術」誌306号
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図1 瞬時心拍の計測例された,いわゆる“フィットネス用リストバンド”を指し,機種によって異なるが,心拍,血圧,呼吸数などを1秒程度の間隔で測定できるものが多い。本研究では,Garmin社製vivosmart4をウエアラブルデバイスとして用いた。本デバイスは,赤外光を用いて血管内の血流変化(脈波)を計測し心拍タイミングを検出するセンサーで,瞬時心拍を1秒間隔で測定できる。この方式は光電式容積脈波記録法(photoplethysmography-PPG)と呼ばれ,皮膚上であればどこからでも脈波を取得可能である。PPGセンサーで検出される心拍タイミングは,医療分野で広く利用される心電図上のR波タイミングとは微妙なずれを持ち,心電図と同じような高精度の心拍変動(HRV)測定は保証できない(10)。他方,ウエアラブルデバイスは腕時計と同じ構造を持つことが多く,胸部や頭部等に電極を装着する必要がないため侵襲性が小さく,作業者の意識や感覚をストレートに反映した心拍変化が得られることが期待できる(11)。また,ウエアラブルデバイスは1~数万円程度のものがほとんどで,かつ,特別な知識がなくともスマートフォンとの通信アプリを利用することで簡単に計測結果をビジュアル化できることから,あらゆる現場で簡単に導入することができる。ウエアラブルデバイスによる心拍変化の計測データの例を図1に示す。-11-行ういように3個の穴を続けてあけるび感想をヒアリング調査3.1 実験体系本研究の目的は,個々の作業者が感じている作業の難易度を,PGPセンサーによる心拍計測結果から読み取る方法を見い出すことにある。そのため,日常会話,作業指示書の黙読およびボール盤による穴加工といった内容が大きく異なる作業をいくつか用意し,各作業者による作業難易度の自己評価と心拍の変動の関連付けを試みた。次に,心拍変動の計測結果をどのように活用すると技能の習得速度が高まるかについて定性的な検討を行った。一般に心拍の変動は自律神経活動に反映する生体現象である心理的な思い込みが生みだす効果(プラシーボ効果)の影響を受けず,心身の健康状態の良しあしの測定指標として広く利用されている。瞬時心拍は心身の健康状態によって柔軟に変動するのが良いとされ,変動が小さいと状態がよくない,すなわちストレスがかかっている状態とされる(10)。3.2 被験者事務的作業を含め,ボール盤による穴加工を行う被験者は20歳代の男子4名とした。これらの被験者は,ボール盤による穴加工の経験はあるが,技能訓練などは受けていない。3.3 作業内容本研究では,各被験者に次の流れで作業を行ってもらった。A. 簡単な会話B. 作業指示書を読み,実験の流れを理解するC. ボール盤の使用に慣れる目的で木材に穴加工をD. アルミ板に3個の穴を続けてあけるE. アルミ板の所定の位置に,バリ生成が起こらなF. 各作業の難易度の自己評価(5段階評価)およA~Fの作業は,大きく3つのパートに分けるこ2.ウエアラブルデバイス3.方法

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