2021年3号「技能と技術」誌305号
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-3-神的なものも含む)寮の部屋から出られなくなった」,「訓練中の様子がおかしい」などがあった場合,担当職員が相談・対応した内容が,入所者管理システム(生活記録をデータベース化したもの)を使って全職員に速やかに情報共有される。吉備職リハには障害者への支援・対応を専門とする障害者職業カウンセラーが中心となり解決策を導き出すが,判断に迷った場合は,即座に,所長以下全管理職と関係職員が招集され対応策を検討していく。一般校では考えられない“命”に関係する事案が実に多いためである。問題があっても担当者任せではなく,組織を挙げて対応していく姿勢は参考になる。以上,吉備職リハならではの取り組みの一部を紹介したが,私共も,新たな課題が出るたびに考え,工夫しながら業務を行っており,こうやって得られたノウハウを他の障害者校や一般校の方に普及する事業も行っている。その一つに,指導技法等体験プログラムというものがある。これは精神障害,発達障害者等に対する障害者職業訓練での基礎的な対応について,障害特性の解説,訓練場面の見学,訓練体験,意見交換などの内容を行う支援入門コースに加え,実際に吉備職リハの訓練生に対し直接指導体験を行ってもらう専門支援実践コースがある。この体験プログラムに組み込まれている意見交換では,参加者の方が抱えている“生”の問題等を紹介しあい,他の参加者の施設での対応方法や,吉備職リハでの対応方法等について話し合う。これが実に参加者にとって今後の取り組みの参考になっているようである。こういった研修の機会は,職業能力開発総合大学校で実施している障害者等に関する知識や訓練現場での対応に関する研修も充実してきているので参加してみてほしい。紙面の関係で吉備職リハならではの取り組みの一部の紹介にとどまったが,ぜひ,吉備職リハまで足を運んでいただき,実際の現場を見てほしい。たくさんの発見があると思う。このの人ことば練達成目標を見失うことがないように同じ担当職員が一貫して支援を続けることとしている。(4)職業適応支援の実施【知的障害・三障害の方】吉備職リハでの職業訓練は,技能習得のための訓練は必須であるが,それだけでは就職後の職場定着が困難な方も多い。精神障害のある方はストレスの対処法について,また,知的障害や三障害のある方にとっては,職場でのマナーやコミュニケーション,質問の仕方や援助要請の仕方,暗黙のルールの理解など乗り越えなければならない課題がたくさんあるため,グループワークや個別相談,日々の技能訓練を通じての習慣化などさまざまな方法・場面で職業に適応するための支援を実施している。この支援が吉備職リハで行っている訓練の肝となる部分であり,1年間の訓練時間の約4分の1をこの支援に充てている。(5)職場をイメージした訓練環境一般校での多くの座席スタイルは,スクール形式が多いと思う。また,個別の質問がある場合は,訓練生が挙手し,指導員が訓練生のところに行って指導するという方法で対応していると思うが,吉備職リハでは,通常の訓練場面から「仕事」を意識した指導を行っており,「訓練校」ではなく,「職場」だと考えて行動するよう指導している。そのため例えば,座席は実際の職場をイメージしたアイランド形式としており,質問する場合は,職場の上司等の様子を見たうえでタイミングを計って質問しに行くように,自らが指導員のところに聞きに行く方式をとっている。また,指導員に対しても「~先生」ではなく「~さん」と呼ぶように指導している。これには理由がある。障害の種類や内容によっては,環境の変化に柔軟に対応することが苦手な方がいるために,就職後の環境にできるだけ近い形で訓練を行い,習慣付けさせることにより就職後スムーズに仕事に就けることを意識して行っているからである。(6)何か問題があればすぐにケース会議を開催して対応「訓練生が問題行動を起こした」,「体調を崩し(精4.おわりに

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