2021年3号「技能と技術」誌305号
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国立吉備高原職業リハビリテーションセンター私は,36年間ポリテクセンター等で職業訓練業務に携わってきたが,令和2年度に国立吉備高原職業リハビリテーションセンター(以下「吉備職リハ」という。)勤務となり,初めて障害者の職業訓練業務に携わることとなった。ここでは,これまで経験してきた職業訓練とは大きく異なり毎日が驚きの連続である。最近,ポリテクセンターにも障害者や心の病がある方,あるいは周りの訓練生とは異なる行動をとる方(以下「障害者等」という。)が入所されるケースが増加してきた。そのため,精神科医やカウンセラーを定期的に招いて訓練生の相談に乗ってもらう機会を設けるなどの対応をしている施設も一部にはあるが,担当となった職業訓練指導員や訓練課の職員が1人で障害特性への配慮を含めた訓練のすすめ方などに悩みを抱えながら対応しているケースも少なくはない。もっと複数の職員間で対応策を検討したり,地域障害者職業センターや吉備職リハのような障害者職業能力開発校(以下「障害者校」という。)と交流を図り専門家の意見を聞きながら適切な対応ができれば,悩んでいる職員だけでなく訓練生自身にとっても自らを理解し,成長させる機会にもつながると思うのだが。とはいえ,一般の職業能力開発校(以下「一般校」という。)の職業訓練指導員等はそういった組織とのつながりも薄く,障害者校がどの様な業務を行っているか,あるいは吉備職リハの存在すら知らない方もいるのではないかと思う。本号では,障がい者および特別な-1-配慮が必要な受講生に対する職業訓練の特集が組まれるということなので,吉備職リハに興味を抱いてもらうため,ポリテクセンター側の目線から,“この取り組みは吉備職リハならでは”と感じていることを紙面の制約もあることから,パンフレットやホームページから読み取れない部分を中心にお伝えする。なお,以下,一般校とは記載しているものの,私は,機構の職業訓練施設以外での勤務経験はないため,あくまでもポリテクセンター目線で記載していることをご容赦いただきたい。吉備職リハで行っている職業訓練についての詳細はホームページ等を見ていただくこととして,簡単に紹介すると,身体障害(難病を含む)のある方,知的障害のある方および三障害(高次脳機能障害,発達障害,精神障害)のある方が仕事に就いて職業的に自立できるように,職業評価(職業適性・作業能力等の評価),職業訓練(技能訓練・職業適応支援),職業指導(個々の適性に合った職業選択の相談)等の一貫した職業リハビリテーションサービスを提供する施設である。職業適応支援という言葉は一般校ではなじみの薄い言葉であると思うが,障害者職業訓練では重要なキーワードになる。詳しくは後で紹介する。職業訓練の種類としては,求職者向け・在職者向け・休職中の在職者向けの三本柱となっている。求職者向けの訓練科としては,下表のとおりで,障害種別ごとに設定してある。ただし,身体障害者職業訓練部長 菅  和雄1.はじめに2.吉備職リハで行っている職業訓練〜パンフレットやホームページからは読み取れない取り組みの紹介〜国立吉備高原職業リハビリテーションセンターにおける障害者職業訓練の特長

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