2021年3号「技能と技術」誌305号
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表1 研修のカリキュラム案知識や障害者への対応スキルがない中で対応をせまられているため,大きな負担となっている現状が浮き彫りとなった。以上を踏まえ,研究会成果として主に指導員に向けた以下の2つの研修を提案する。なお,障害者校だけではなく,一般校の指導員についても特配受講生に対応するために,指導員のキャリアパスの中で「障害者訓練基礎研修(仮称)」を受講し,そのスキルを身につける必要があると考える。【障害者訓練基礎研修(仮称)】障害者校への異動前や異動直後に,障害者訓練を担当する指導員として必要な知識と対応を身につけるための基礎研修【障害者訓練スキルアップ研修(仮称)】障害者校での指導業務期間をとおして,障害者訓練を担当する指導員として対応力向上をはかるためのスキルアップ研修また,研究会では,アンケート等の調査結果から障害者訓練を担当する指導員として新たに必要となるスキルを分析し,機構の指導員が障害者校へ異動時に実施している部内向けの研修等も参考に,カリキュラム(表1)の提案を行った。また,研修は指導員の能力向上に資するための訓練であるため,職業大が実施していくことを併せて提案する。3.2 指導員免許と人材確保について今回のアンケート調査では,障害者訓練を担当するための新たな免許職種の新設を要望する意見も見受けられたが,すべての指導員に障害者訓練に対応できるスキルが必要になっていることを踏まえると,新たな免許職種の新設ではなく,将来的には全-26-ての指導員が障害者訓練および特配受講生への対応に必要となる基礎知識を有することが必要であり,職業大が実施する指導員養成課程における障害者訓練に対応できるスキル習得のためのカリキュラム充実等が不可欠であるということを研究会として提案する。次に指導員の人材確保についてであるが,指導員(テクノインストラクター)の継続的安定的な養成・確保のための施策のひとつとして,指導員免許の受験資格および免除資格の追加・拡大が平成30年4月から行われており,障害者訓練を担当するにあたりニーズはあるが取得が困難な免許職種についても,取得要件等の緩和が行われることを期待する。また,これらの施策により指導員の仕事が広く認知され,まずは指導員候補となる人材を確保した上で,指導員養成課程において障害者訓練および特配受講生への対応に必要となる基礎知識を付与していくことで,障害者訓練を担当する指導員の不足が解消できるものと考える。3.3 専門家等の配置について今回,障害者や特配受講生に対して,開かれた職業訓練を追求していくためには,指導員だけでは限界があり,日常生活や就職支援の面でより高い専門性を持ったスタッフによる集団支援体制作りが急務であるという状況が明らかとなった。特に受講生のメンタル面をサポートする精神保健福祉士の要望は高く,障害者校については常駐,一般校については特配受講生の対応または指導員や就職支援員等の職員への助言をいただくために,週1回以上の巡回相談ができる配置基準の拡充が望まれる。本調査研究を通して,障害者訓練を担当する指導員とその取り巻く状況の把握と解決に向けての課題およびその対応策について取りまとめを行うことができた。本調査研究にご尽力をいただいた全国の施設等の関係者,研究会の委員等に感謝の意を表するとともに,今後,これらの課題を解決するための一歩を踏み出すことを厚生労働省や職業大に期待する。4.おわりに

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