2021年3号「技能と技術」誌305号
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職業能力開発総合大学校基盤整備センター 竹内 智彦・大野  武伊藤 英樹障害者を対象とした職業訓練(以下「障害者訓練」という。)については,障害者職業能力開発校(以下「障害者校」という。)だけでなく,都道府県立の一般の職業能力開発校(以下「一般校」という。)においても,受け入れが進められている。このことは,厚生労働大臣が策定する「第11次職業能力開発基本計画(令和3年度から令和7年度まで)」における障害者の職業能力開発では,障害者校は一般校での受け入れが困難な重度障害者を受け入れること,一般校は施設のバリアフリー化の推進や精神保健福祉士等の専門家の配置等により,障害者が入校しやすい環境を整備し,障害者の職業訓練機会の拡充を図ることがうたわれている。これらのことから,障害の程度に応じて障害者校だけでなく一般校でも障害者の受け入れがさらに進められ,今後職業訓練に関しては,障害者校と一般校の垣根がなくなることで,すべての職業訓練指導員(以下「指導員」という。)に障害者訓練にも対応できるスキルが求められるようになると考えられる。その一方で,都道府県からは,障害者訓練の職業訓練科目の大半を占める事務系職種に係る指導員養成訓練が職業能力開発総合大学校(以下「職業大」という。)では設定されておらず,都道府県の指導員が保有する職業訓練指導員免許(以下「指導員免許」という。)の免許職種では障害者のニーズに合わせた訓練や指導が十分にできない等,障害者訓練-23-を担当する指導員不足の問題が指摘されているところである。また,一般校における障害者訓練以外の訓練コースにおいて,診断を受けていないものの精神障害や発達障害と似た行動特性を有する「特別な配慮が必要な受講生」(以下「特配受講生」という。)が受講するケースが増えており,訓練現場では,指導員がその対応に苦慮しているという声も多く聞かれている。本調査研究は,厚生労働省からの依頼により令和元年度から令和2年度の2カ年計画で,これらの課題にかかる現状把握および分析を行い,その結果から課題の抽出を行うことを目的とし,職業大および障害者校の指導員,厚生労働省,高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下「機構」という。)職業リハビリテーション部で構成する研究会の議論やアンケート調査等から,障害者訓練を担当する指導員不足の解消に向けて,指導員養成,研修体系等についての提案を行った。ここではその結果の概要を報告する。2.1 実施の概要本調査研究は,アンケートおよびヒアリング調査を基に研究会を実施し,以下の①と②の現状把握と分析を行い,その結果から課題の抽出および対応を検討していくこととし,③と④については,今後の障害者訓練を担当する指導員の養成に向けてのあり方等を探った。1.はじめに2.調査研究の実施障害者訓練を担当する職業訓練指導員等に関する調査研究

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