2021年3号「技能と技術」誌305号
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職業能力開発総合大学校 深江 裕忠障害者向けに特化していない職業訓練を実施している職業能力開発施設で,精神・発達障害の可能性がありそうな特別な配慮が必要な受講生(以降「配慮受講生」とする)が話題にあがりはじめてから10年近くが過ぎた。例えば,高齢・障害・求職者雇用支援機構(以降「機構」とする)では,学卒者を対象とした訓練を行っているポリテクカレッジから,他の学生とは異なった行動特性を示す学生が多数顕在化しているという報告があり,平成24年3月に,能力開発研究センター(基盤整備センターの前身)にて『特別な配慮が必要な学生等への支援・対応ガイド』1)を開発している。これまで機構では,障害者の職業訓練で使われるツールは開発していたが,配慮受講生にも対応したツールを開発したのはこれが最初である。同じ時期に,小・中学校の通常級に在籍する児童のうち知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒の割合が約6.5%という文科省の調査結果2)が発表されて,教育関係者の間で大きく話題に上がった。しかも,10年前の前回調査と(条件が異なるので単純比較できないが)ほぼ同じ割合である。もちろん,小・中学生が大人になり,その一部の人たちが職業訓練を受講するのだから,職業訓練の関係者(特に学卒者対象の訓練の担当者)にとっても気になる話題であった。-17-その後に機構では,平成24年12月から3年間の研究プロジェクトを実施し,その成果をまとめて,平成27年3月に,基盤整備センターにて『訓練・学習の進しんちょく捗等に特別な配慮が必要な学生への支援対応ガイド(実践編)』3)を開発した。同時に職業能力開発総合大学校では,このガイドを用いた指導員研修を開発し4),毎年多数の指導員が研修を受講している。平成30年には,機構本部にて「特別な配慮が必要な訓練受講者に対する支援方法に関する検討会」(以降「検討会」とする)を設置し,機構での配慮受講生への支援・対応を検討をするとともに,その成果を普及している。著者もその委員である。ところで機構では,職業訓練を担当する部署だけでなく,障害者の職業生活を支援する職業リハビリテーションを担当する部署もある。そして,この部署にて多数の障害者雇用の支援のノウハウやツールが長年に渡って開発され,公開5)6)されている。実は,機構で開発された配慮受講生への支援・対応については,この職業リハビリテーションを担当する部署で開発されたノウハウやツールを活用していることが多い。障害者に特化していなく,広く一般的な人々にも活用でき,深い専門知識を必要としないノウハウやツールを紹介し,職業訓練の現場に合わせた利用方法を提案している。そのため,配慮受講生への支援・対応について,より深く勉強したいときには,元になっている障害者向けのノウハウやツールの資料を使って学ぶことが可能である。このように,10年近くの年月の間に配慮受講生へ1.はじめに特別な配慮が必要な訓練受講者への支援・対応Q&Aの開発

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