2021年3号「技能と技術」誌305号
13/30

表7 訓練環境を就業環境と定義した構造化の例<参考文献>職務遂行に当たって必要となる専門技能に係る訓練と併せて,職場への適応性を高めるための適応支援も実施します。導入期の訓練期間においては,自己理解と対処法やストレス・疲労のマネジメントに関する講座を実施し,その後,必要に応じて,日常生活や職業生活におけるコミュニケーション,リラクゼーションやセルフケアに関する講座等を実施します。これらの講座受講後は,技能訓練の中で活用されるよう支援します。講座の受講に加えて,技能訓練を通じて,職場への適応力を高められるよう,表7のように訓練環境を就業環境(職場)として定義(構造化)し,技能訓練を通じて職場で求められるマナー,コミュニケーションを自然と身に着けられるように工夫しています。そのため,訓練課題の指示を業務命令として行い,途中経過や結果を報告したり,不明な点がある場合には相談したりと,職場でのOJTのように,技能訓練,適応支援を行います。適切な行動がとれていない場合には,社会生活技能訓練(SST)の個別支援の手法を用いて,その場で適切な行動を解説し,ロールプレイを行って,次回以降,適切な行動ができるよう支援しています。-11-「職業訓練実践マニュアル 精神障害・発達障害者への職業訓練における導入期の訓練編Ⅲ ~導入期の訓練のカリキュラムと具体的な進め方~」(発行:国立職業リハビリテーションセンター,令和3年2月)※各種「職業訓練実践マニュアル」は,当機構HPより,その全文をPDFでダウンロードできます。以上のように,訓練生個々の特性に応じた職業訓練を実施するために,導入期の訓練,モジュール訓練方式による訓練,訓練環境を構造化して技能訓練を通じて行う適応支援を行っているところですが,今後,次の取り組みを行うこととしています。導入期の訓練については,これまで,専任の指導員等が行っていましたが,令和3年度中に,各科の指導員が,訓練生個々の特性を把握して,対応法の検討と習得を支援し,習得した対応法を他の訓練場面にも適用できるよう支援を行えるように進めています。モジュール訓練方式については,MUの大きさや単位の設定基準にあいまいさがあり,共通の考え方で設定ができておらず,また,MUの時間設定も各科共通の考え方が十分に整理されていません。また,障害特性を踏まえた就業可能な職域(MES)の開拓やそれを構成するMUについては継続的に検討すべき課題となっています。適応支援については,特別支援障害者の割合の増加に伴い,当該支援を希望する者が増加しており,各種講座の開講や支援体制の充実について検討するとともに,指導員以外の専門家との連携も深めながら進めていくこととしています。以上の訓練や支援を通じて得られた新たな指導技法等については,その取りまとめを行うとともに,当センターが行っている指導技法等体験プログラム等の指導技法等を提供する機会を通じて,全国の障害者職業能力開発施設等に普及を図っていくこととしたいと考えています。4.適応支援5.おわりに

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る