2021年3号「技能と技術」誌305号
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て,MUを追加・削除し,個別カリキュラムを作成します。また,技能訓練,就職活動が順調に進み訓練期間内に内定を得,内定先企業から特定の技能訓練の希望があった場合には,個別カリキュラムを見直し,技能訓練を行います。3.2. 教育工学の手法を用いた訓練の工夫機械製図科では,全ての障害種別の方を対象に,設計職への就業を目標とした職業訓練を実施しています。訓練方法を見直す前は,テキストを指導員が説明した後,演習を行う方法で訓練を行っていたため,自主的に進められない講義の時間が多く設定されていました。そこで,インストラクショナルデザイン(以下「ID」という。)の考え方を援用し,自学自習を基本として訓練できるカリキュラムに変更することとしました。IDの考え方では,①学習意欲向上のための動機付けを行う,②目標を「理解すること」ではなく「行動」で設定する等があります。これを,部品同士の勘合具合を図面上に指示する「公差・はめあい」分野の教材を例に解説します。①のステップでは訓練開始当初に,多くの部品に公差やはめあいが設定されている自動車用変速装置を訓練生に提示し,部品同士が勘合されている部分で,大きな隙間での勘合,極小の隙間での勘合等,各種の勘合具合で組み立てられている部品を実際に触ってもらいます。その後に,どのように変速機が組み立てられているか,各部がどのように稼働しているかを解説し,各所の勘合具合で,なぜ当該の勘合具合が採用されているか,図面上にどのような指示をすれば量産する場合でも確実に狙った勘合具合を達成できるか自分なりの仮説を立ててもらいます。②のステップでは,図面内で数値による公差やはめあい方式の公差指示できること,最大・最小の隙間・しめしろの計算ができること等,演習問題や変速装置を見せながら,公差・はめあい分野での技能習得目標を提示します。-9-次に,訓練生に訓練教材を渡し,一読したところで報告してもらいます。その後,各分野の理解度を確認するため,指導員が訓練生に1問1答形式で出題します。この中で,正答が導けるか,効率の良い解き方ができているかを観察し,必要に応じて補足説明やアドバイスを行います。一通り理解度の確認と必要に応じて補足説明が終わったところで演習問題を行い技能の定着を図ります。使用する教材は,新規に作成したテキストに加え,既存資料を編集したものと市販テキストを用いています。それらを用いた自学自習が可能となるよう,どのように訓練を進めるかを示す課題指示書を提示することで自発的に訓練ができるようにしています。訓練の習熟度は,1つの職務単位を構成するMU群ごとに小テストを実施しています。具体的には,1~6MUごとに1回,計11回実施しています。また,これらの小テストは,これまでの学歴や職歴の中で習得している技能・技術を確認するために,事前テストとしても用い,訓練内容を省略するかどうか判断しています。以上の工夫により,訓練意欲を向上させ,能力に応じてMUを取捨選択しながら,自学自習で訓練を進められるようになり,個々の訓練生の特性に合わせた訓練を行うことができるようになります。作成した教材は,小テストで多くの訓練生が誤答した問題や,その後の総合演習で課題となりやすい分野を分析し,分析⇒設計⇒開発⇒実施⇒評価(ADDIEステップ)を繰り返し,実践しながら弱点を補強して,より効率的に技能を身に着けられるように改変を行っています。3.3. 総合評価訓練の総合評価は,技能照査に加えて,表6の評価表を用いて行っています。評価表は,1年間に行う訓練内容,使用するテキスト,演習課題の詳細に加えて,図5の訓練の流れが記載されている一覧表で,訓練生は訓練の進捗に合わせて,各モジュールが始まった日,終わった日,小テストの合否と得点を記入します。小テスト

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