2021年2号「技能と技術」誌304号
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四国職業能力開発大学校 及川 達裕組込み分野の初学者にとって従来型のマイコン制御プログラミングを学ぶうえでの課題は,インターフェース回路とマイコンプログラミングの双方を同時に学習することにあった。特に,これまでの訓練教材の多くはプログラミング言語に「アセンブラ言語」を使用することが多く,初学者にとっては難解であり,学習の初期段階からマイコンに対する苦手意識を持ってしまう大きな要因だったと言える。昨今の組込み開発においては,アセンブラ言語の使用率は低下しており,日々広がる組込み分野の技術習得のためにはカリキュラムからアセンブラ言語を除外することも増えてきた。そこで,今回はアセンブラ言語に代わってビジュアルプログラミング言語を採用することで,初学者の心理的な敷居を下げると同時に,インターフェース回路設計,IO制御プログラミングの本質を学ぶことに絞ることとした。また,最終課題には「デジタル温度計の開発」といった初学者にとって身近で製品をイメージしやすい課題テーマを設定し,動機付けにも配慮した教材「ビジュアルプログラミングを活用したマイコン及びC言語の導入教材」を開発した。今回,開発した教材の一覧は以下の通りである。① 訓練生向け訓練用テキスト② 指導員向け教材の取扱説明書③ 解答のソースコード④ 実習機器一式*1 Science(科学),Technology(技術),Engineering(工学),Mathematic(数学)の各分野を横断的に学ぶ,次世代を担う子供向けの教育の考え方の1つ。-1-⑤ 自主的な自宅学習を想定したシミュレーター環境を活用したオンライン教材2.1 教材開発の目的本教材は,筆者が令和2年度まで所属していた熊本職業能力開発促進センター(以下,「熊本センター」という)の離職者訓練「組込みマイコン技術科」にて開発・運用していた教材である。教材開発の発端は,熊本センターにて使用していた教材の老朽化・陳腐化にある。従来,H8系のマイコンとアセンブラ言語を組み合わせた訓練を実施していたが,実習機器の老朽化と時代の変化への対応を図るために教材の刷新の必要があった。学習内容はそのままに他のマイコンボードへの移行も検討したが,アセンブラ言語そのもののニーズの減退,組込み初学者にとってのアセンブラ言語の敷居の高さという観点から,元々の教材と同様の学習内容で教材を刷新するには適さないと判断した。そこで,近年のSTEM教育*1の成果物でもあるビジュアルプログラミング言語を活用し,プログラミングの敷居を格段に下げ,「組込み初学者が挫折しない,そして次の学習につながる教材」といったコンセプトで教材開発を行った。1.はじめに2.開発のコンセプト令和2年度職業訓練教材コンクール 厚生労働大臣賞(入選)受賞ビジュアルプログラミングを活用したマイコン及びC言語の導入教材

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