2021年2号「技能と技術」誌304号
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図4 東京商工会議所「ビジネスマナー研修」リーフレットを網羅したものとなっている。東京商工会議所は,本講座の目的を「恒常的な人材不足に頭を悩ます中小企業が,外国人材の確保に向け,採用活動を拡大させると見込まれる中,外国人社員の方々が日本の商習慣にいち早くなじみ,新たな職場環境での定着,活躍を支援する」としている。カリキュラムからも,日本人であれば,「暗黙の了解」として理解するものを言語化し,外国人材のビジネス基礎を習得することを目的としたものであることが分かる。当日は,20名が受講した。受講者からは「電話対応を勉強できた」,「身だしなみや,名刺の交換方法などの知らなかった内容を学ぶことができた」,「お客さまをおもてなしするという心構えが大切だと気付いた」といった声が寄せられ,日本企業で働くうえで必要な基礎知識・価値観の習得を目指した研修であったと言える。4.3 平田商工会議所の地域共生支援次に,平田商工会議所による地域共生支援である。平田商工会議所は,1946年に設立され,島根県平田地域で事業を営む企業の支援を行っている。同商工会議所は,2019年事業計画において,重点項目の一つに「入管法改正に伴う外国人の就業機会の増加など外国人との共生社会への対応」を明記し,外国人労働者への支援を打ち出している。また,監理団体として,中国人の技能実習生を受け入れてお-19-り,地元の主要産業の一つである鋳造業への就労を支援している。同商工会議所は,地元の島根県立平田高等学校と連携し,地域の外国人材の定着支援を行った。同校では「総合的な学習の時間」で「多文化共生」として,外国人労働者を取り上げていた。同会議所は監理団体として外国人技能実習生受入事業を行っており,近隣企業がブラジル人を多く雇用していたことから,同会議所が当該授業のコーディネーターとして参画することとなった。具体的には,商工会議所職員から同校生徒に対し,日本で働く外国人の在留資格などの説明を行った後,会員企業の協力を得て,生徒らとともに地元で働く外国人労働者に向けたアンケートを実施した。9社90人から回答が集まり,高校生らとともに「日本語教室を増やしたほうがよい」,「日本人との交流が増えれば生活や仕事の助けになる」など結果をまとめた。結果のとりまとめ後,市長へ提言・意見交換を行ったほか,同校の公開学習の場で地域住民へ発表・報告がなされた。同商工会議所は「こうした連携事業が外国人に対する地域住民の意識改革および外国人が抱える課題・問題の支援施策につながり,地域に根差した外国人労働者の支援に資する」と述べている。本事例では,直接的に外国人材の職業能力開発を支援してはいないが,外国人材の就労環境・生活環境を地域の若者と検討し,政策提言を行った。こうした取組みが実を結び,外国人材が就労しやすい環境となれば,外国人材の生産性向上につながり,間接的に外国人の職業能力を高めることにつながる。地域共生支援は,平田商工会議所の他,複数の商工会議所が実施している。例えば,福岡県の宮若商工会議所は,2019年3月31日,外国人材向けのバスツアー「宮若実感バスツアー」を実施した。市内8企業で働く韓国,中国,ベトナム,インドネシア出身の20代から30代の若者85名が参加した。本企画の趣旨は,参加者の多くは普段アパートと職場を往復するのみで行動範囲が狭い傾向にあるため,市内の観光名所を巡る機会を設

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