2021年2号「技能と技術」誌304号
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まず,商工会議所という組織になじみがない方も多いと思うので,商工会議所の概要を述べる。商工会議所は,「商工会議所法」に基づいた特別認可法人であり,管内の商工業の総合的発展を図り,社会一般の福祉増進に資することを目的とする地域総合経済団体である。わが国最初の商工会議所である「商法会議所」は1878年に東京,大阪,神戸で設立され,その後,全国の主要都市に相次いで設立された。1892年に15の商業会議所がその連合体として「商業会議所連合会」を結成し,1922年6月に「商業会議所連合会」を改編し,常設の機構・事務局を持つ「日本商工会議所」が誕生した。当時,企業の意見を集約する機能を持つ組織がなく,諸外国に対し経済界の声を主張するという目的のもとに設立された。設立には,日本の資本主義の父と称される渋沢栄一翁が尽力され,東京商工会議所の初代会頭に就任している。渋沢翁の半生は,現在放映中(2021年4月時点)のNHK大河ドラマ「青天を衝け」で取り上げられている。現在(2020年4月時点),全国で515商工会議所がそれぞれの地域で活動しており,会員数は124万(2020年3月現在)を数えている。なお,商工会議所は,以下の4つの特徴を持っている。1)地域性-地域を基盤としている。2)総合性-会員はあらゆる業種・業態の商工業から構成される。3)公共性-公益法人として組織や活動などの面で強い公共性を持っている。4)国際性-世界各国に商工会議所が組織されている。人口減少,少子高齢化など,目まぐるしく変化するわが国の経済・社会構造と連動し,今日において,商工会議所が果たすべき役割は多岐にわたって-16-おり,地域特産品の開発支援や地元の若者の婚活支援等も行っている。各地商工会議所の活動の概要は日本商工会議所が運営する「日商ASSINST Biz」(https://ab.jcci.or.jp/)をご覧いただきたい。3.1 人手不足の状況次に,わが国の人手不足の状況とそれを反映した外国人材の受入れニーズの高まりについて述べる。まず,ご存じのとおり,わが国では,高齢化・少子化による生産年齢人口の減少を背景に,人手不足が深刻化している。日本商工会議所・東京商工会議所が実施した「人手不足の状況,働き方改革関連法への対応に関する調査」(2020年7~8月)では「人手が不足している」と回答した企業は36.4%となった。新型コロナウイルス感染症の発生以前の2019年3~4月調査では,人手不足と回答した企業は66.4%に上っていたため,新型コロナウイルス感染症によって,人手不足は若干緩和したと言える。緩和の状況は業種ごとに様相が異なっている。2020年7~8月調査においても,「介護・看護業」は66.0%,「建設業」は56.9%となり,それらの業種はコロナ以前と変わらず,深刻な人手不足である。一方,「宿泊・飲食業」は,2020年2~3月調査時点では70.3%であったものの,同年7~8月調査時点では32.4%(▲37.9ポイント)と大幅に人手不足感が緩和した。「卸売・小売業」も同様に53.6%から31.2%(▲22.4ポイント)へと大幅に緩和しており,インバウンド需要に対応するため,外国人材の雇用を進めてきた業界に大きな影響が出ていることが分かる。3.2 外国人材の受入れニーズの高まり前述した慢性的な人手不足を受け,中小企業における外国人材の受入れニーズは高い。日本商工会議所・東京商工会議所が実施した「多様な人材の活躍に関する調査」(2020年7~8月)によると,48.7%の企業が「外国人材の受入れニーズがある」と回答2.商工会議所とは3.わが国の人手不足と外国人材

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