2021年2号「技能と技術」誌304号
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日本商工会議所 産業政策第二部 片山 雅美-15-め,IT人材の育成や個々の企業のニーズに応じたオーダーメード型の支援等を行っていくこととしており,ウィズコロナにおける職業能力開発の必要性が説かれている。1.2 地域の雇用を支える外国人材次に,わが国の外国人材の位置づけについて述べる。詳細は第3節で述べるが,新型コロナウイルス感染症の拡大によって,外国人の新規入国が制限されたものの,2020年10月末の在留外国人材数は,昨年同月よりも増加し,約172.4万人となった。一都三県「以外」で就労する外国人材は,約98.4万人で全体の57.1%を占めていることから,外国人材は,地域の産業の担い手であると言える。コロナ禍においては,技能実習生の実習中止や,外国人材の雇止めも生じたが,そのような場合には,一概に帰国させるのではなく,国内で転職する等してもらう必要があり,そのような意味で,わが国での就労・活躍に向けた職業能力開発が求められているだろう。1.3 本稿の意義と目的本稿は,そうした社会情勢と地域の雇用を支える外国人材の重要性に鑑み,地域総合経済団体である商工会議所が行う外国人材の職業能力開発に関する取組み・支援を紹介する。そのうえで,外国人材の職業能力開発における商工会議所の役割を整理し,課題を述べる。1.1 ウィズコロナにおける職業能力開発の必要性新型コロナウイルスの感染拡大によって,わが国の経済状況が一変したことを受け,今後想定される産業構造の変化に対応するため,外国人材を含め,労働者の職業能力開発の重要性は一層高まっている。新型コロナウイルス感染症の発生以前は,少子高齢化と人口減少によって,多くの中小企業が慢性的な人手不足に陥っていたものの,コロナ禍を契機に,人手不足が緩和し人手が一時的に過剰となった業種と,引き続き人手不足である業種に分かれた。そうした状況を踏まえ,政府は,一時的に雇用過剰となった企業と人手不足の企業との間で,在籍型出向制度等の「雇用シェア」による「失業なき労働移動」を進めることとしている。労働者が出向先の企業・業界で,生産性を高めながら働くためには,これまで在籍していた企業で培ったスキル・能力とは異なる能力等を身に着ける必要がある。「失業なき労働移動」を可能とするためには,官民が連携し,労働者の職業能力開発をサポートする必要があるといえる。加えて,2021年度から2025年度までの公共職業訓練の方針等を定める「第11次職業能力開発基本計画」においても,「新型コロナウイルス感染症の影響によるデジタル技術の社会実装の進展や労働市場の不確実性の高まり」によって,「労働者を取り巻く環境が大きく変化していくことが予想され」るた1.はじめに外国人材の職業能力開発における商工会議所の役割

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