2021年2号「技能と技術」誌304号
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広島職業能力開発促進センターでは,求職者や在職者を対象とした溶接をはじめとする職業訓練を実施している。当施設が存在する広島県は建設業をはじめ,自動車産業,造船業,重機製作等,製造現場が多く存在しており,それらの製造現場に対応した溶接関連のコースの在職者訓練を年間250時間以上実施している。また,そのような製造現場においては非破壊検査が行われており,検査業務に対応した非破壊検査関連のコースの在職者訓練等を年間200時間以上実施しているところであった。建築等の製造工程において,品質管理という観点から非破壊検査が特に重要視されている。中でも超音波探傷について機器の性能および非破壊検査技術者の技量により欠陥の検出率に変化が生じてしまうため現場において機器の信頼性と技術者のレベル維持が求められている。しかしながら,内部欠陥の超音波探傷は目に見ることができず,得られる情報も実際の傷ではなく画面上にエコーとして現れるだけであることから,基礎技術の習得から欠陥の把握まで理解し得ることは難しい技術であり企業においては担当できる者の人材育成に苦慮しており,企業内OJTを行うことが難しいため業界団体からの要望か広島職業能力開発促進センター 宮本 直樹・近藤 友樹福田  良・山下 宗信※宮本氏 現 公共職業訓練部訓練支援課-11-ら当施設に人材育成の期待が高まっていたため,その要望に応えるべく教材開発に至った。その技術習得に使用される市販の試験体については,人工的に作成された欠陥であり,実際の現場で発生する欠陥とは異なるものであった。その探傷により検出すべき欠陥は市販の試験体よりもさらに微細な欠陥であり意図的に作成することが難しい現状であった。そのため,超音波探傷を行う作業者は欠陥が存在した時にしか経験することができないため,検出スキルは作業者の経験値に委ねるしかない技術であった。そこで当施設は検査を行う講習だけでなく,溶接の講習も行っており両方の技術を有している。このことから,実際に検出すべき欠陥を作成することができるため,現場で必要とされる検出スキルを身に着けることができるようになっている。また,作成にするにあたって,より多くの方に利用してもらえるように,検査技術のノウハウを入れ込んだ動画およびテキスト教材費により基本的な技術を有する指導員であれば同様の講習ができるように作成することで,全国の施設で講習できるようになることを目標にした。1.はじめに2.教材作成にあたって3.作成にあたっての課題令和2年度職業訓練教材コンクール 厚生労働大臣賞(入選)受賞動画と欠陥鉄骨でわかる鉄骨超音波探傷実践教材

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