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図6 教育現場の労働安全衛生法の適用関係境の整備と人的処置に対する義務を果たす事を求めている。「自主的活動の促進」は,安衛法は守るべき最低基準を示しており,この最低基準を守るのみならず,さらに進んでより安全で健康的で快適な職場環境の実現に向けて努力することを求めている。例えば,安衛法の安全基準では通路の幅は80cm以上と定められているが,それ以上あるとより安全である場合は,率先して改善に努めることにある。また,最近どこかの企業で暑い屋外の自動販売機を,通常より非常に安い飲料水を提供し話題になったが,これらも自主的活動の促進の一つである。労働基準法と安衛法の繋がりは,組織で働く労働者にとって労働契約は雇用主との契約であり,労働基準法順守に基づいて契約が行われる。その中の第42条に「労働者の安全及び衛生に関しては,安衛法の定めによる」[9]とされている。つまり安衛法で言う「労働基準法と相まって」の意味はここにある。当然,労働基準法で定める基準に達しない契約条件は労働基準法第13条で無効とされている。4.2 職業訓練の労働安全衛生の適応範囲では,職業訓練ではどうだろうか。研修での聞き取り調査とアンケートから,事故・災害が起こると「怪我をすると本人も困るし学校も困ることになるから」との多くの回答から,怪我をさせてはいけないことはだれでも知っている。たしかに怪我をすると本人も痛いし,担当指導員(教官)もいろいろな面で影響を受けることになる。一例として,「実習中に災害が発生すると,誰が病院に引率をするのか。担当者が一人の場合はどうするのか,残された訓練生は誰が担当するのかなど」様々な問題が発生する。これは当然,取り決めておく必要があることは言うまでもない。安全は「わが子を見る目線で」とよく言われるが,これは「人たるもの人間尊重」を基本とし,人道的な観点からも災害は防がねばならないことは言うまでもない。やはり訓練施設では,訓練生の生命,身体,健康を守って訓練を受けてもらう義務を負っている。これが訓練施設の設置した設備や機械-4-だとか,または指導上の不備,不注意によって訓練生が災害に遭ったということは,安全配慮義務違反となる可能性がある。だから法律上の義務として災害防止活動が必要である。ところで,安衛法上の訓練生(学生)の位置関係を図6に示した。安衛法は,一般の企業を対象とした法律だけではなく,2004年に国立大学が独立行政法人化された以降と併せて,以前より適用されていた公立,私立大学,専門学校、当然訓練施設等を含め,安衛法が適用されている。図6が示すように都道府県,法人(訓練施設側)は教職員との間に雇用関係が有り,教職員に対して安衛法順守のもと安全配慮義務を負っている。一方,学生に対しては,労働者ではないため,雇用契約は無いが,訓練施設側と訓練生(学生)との間には入学したことによって在学契約[10]が成立する。つまり訓練施設側は授業を提供する職務を負い,訓練生(学生)は訓練施設側に対して授業料を納める義務や,訓練施設側の指導に従って教育(訓練)を受ける義務を負っている。この在学契約によって,訓練施設側は訓練生(学生)に対し,安衛法に基づき訓練生(学生)の生命・身体に危害が生じないように配慮を行い,人的,物的環境を整備し,危険から訓練生(学生)を保護すべき安全配慮義務を負うとしている。このことは,一般の労働者と何ら変わらない。

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