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図1 安全衛生活動に対する聞き取り調査及びアンケートより図2 度数率の計算式図3 訓練生100人の度数率の算出倒になる」などの声が聞かれた。第2は,研修の時間配分や資料提示内容についてである。研修教材は中央労働災害防止協会[3]及び日本労働安全衛生コンサルタント会[4]の研修資料を参考に,その訓練内容に合った教材を自作している。例えば,介護科のある訓練では「介護のポンチ絵」,ビルメンテナンス科では「メンテナンスの災害事例」印刷科では「印刷現場写真や有機溶剤の取り扱い」などをできるだけ提示するようにしているが,しかし「ポンチ絵」では実感がわかない,「事例数が少ない」「時間が短すぎる」などの意見もあり,これらの要望にできるだけ答えるべく改善検討を行なっている。以上2点に集約されるが,著者は,安全衛生に対する意識改革が重要と認識し,第1の「安全衛生研修の重要性の認識」に焦点を絞り,安全は何より優先する「安全第一」の原点に立ち,やらされ型研修や消極的研修ではなく,現場に活かされる安全衛生活動の必要性を十分に理解し,実行してもらうための,教材開発を行っている。図1は,第1にあげた安全衛生活動の重要性の認識度調査で,アンケート及び聴き取りからの重点内容である。以下,図1の3項目を中心に,安全衛生教材の検討開発を行う。3.1 訓練災害発生率の現状安全衛生教育の重要性を認識するには,まず訓練災害発生の現状を知らなければならない。産業界において,災害「ゼロ」を目標に法的及び人道上として,日々安全衛生活動が実施されている。労働災害の発生状況を評価する1つに度数率があり,度数率-2-は労働災害の頻度を表すもので,昭和63年度の全産業の度数率は2.09で死亡者数[5]は2549名であった。これに対し平成29年度では死亡者数978名,度数率1.66まで低減達成している。これは国をあげて安全第一に取り組んできた成果と考えるべきであろう。図2は,度数率の計算式を示したものであるが,「度数率」とは,100万延実労働時間当たりの労働災害による死傷者数を表したものであり,簡単にいうと500人の従業員のいる企業で1年間に2000時間の労働時間中に1件の労働災害が発生すると,度数率1となる。2000時間については,労働安全衛生法[6](以下 安衛法と略)が昭和47年にできた当時は,これぐらい働いていたことになる。では,訓練施設の度数率を算出してみる。訓練施設の度数率は比較的算出しやすく,在校生数と訓練時間数がわかれば度数率は出てくる。例えば,仮に年間1400時間訓練で訓練生100人の施設で1年間に1件の災害が発生すると度数率は7.1となる。図3はその計算を示したものである。全産業の度数率を,そのまま訓練災害に当てはめて論じることはできないが,全産業と訓練災害の特徴に着目すると,図4が示すようなイメージとなる。図が示すように企業では重篤,重傷災害の災害レベルは高く度数率は少ない。それに対し訓練災害は,「すりむき」「切り傷」「やけど」など比較的軽傷災害が占めているが,件数は多いことを示している。 全産業の度数率は「休業1日以上及び身体の一部又は機能を失うもの」を算出したものである。一方,訓練災害は前述したように,1回以上の病院治療を要したものであるが,中には件数は少ないものの,重篤災害のケースも報告されている。このことはハ3.安全衛生活動の必要性

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