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職業能力開発総合大学校 千葉 正伸職業訓練受講中に何らかの事故や災害を受けた数は少なくなく,報告では,災害傾向として若年者や高齢者に多く見受けられる。企業全体の災害が年々減少しているのに対し,訓練災害は依然高く横ばいの状態で推移している。災害の頻度を示す度数率[1]で比較すると,平成29年度の全産業の度数率は1.66[2]であり,これは1社当たり約1.66件の何らかの災害が発生していることを表している。企業の災害と訓練災害を単純に数字だけで比較することはできないが,企業災害は死亡災害を含め重篤及び重傷災害などの労働災害保険適応として届けられたものである。それに対して訓練災害は,医師の治療を受けたものをカウントしており,たとえ軽傷災害であっても医師の治療を受けるよう指導していることもあり,統計上高く現れるものと推測される。しかし軽微なものであっても,災害は「ゼロ」でなければならないことは言うまでもなく,著者は訓練災害の撲滅を目指し「危険予知訓練とリスクアセスメント(職業訓練現場の危険を見破る目)」をテーマとする研修を行っている。平成26年度~平成30年度の5年間に約900名余りの指導員研修を実施しており,その研修中における聴き取りとアンケートによる満足度調査から,内容に対する意見,要望などを精査した結果,「安全衛生活動の継続の意義と重要性」の認識が十分でないことに結論づけた。訓練現場では,物的環境整備と人的な安全教育の両方が指導員に求められ,これらは-1-全て安全配慮義務として位置付けられる。著者は,安全研修において,訓練現場の安全指導体制について整理し,指導員の現場における安全配慮責任について,安全研修教材の中心に取り入れ,教材の再構築を行う。またこれが安全研修を通して更に安全に対する意識の高揚と,職場の安全を目指して教材開発を行う。オーダーメイド型研修として開始した「危険予知訓練とリスクアセスメント(職業訓練現場の危険を見破る目)」研修のアンケート及び意見,要望等を集約すると,大きく二つに分けられる。第1は,安全衛生活動に対する重要性の認識が不十分であることがあげられる。研修先で,開始早々に「何のために今日の安全研修を受けるのですか」と研修の都度聞くことにしている。最も多いものに「安全は重要だから」「研修として決まっていたから」「出ていた方がいいから」などで,中には「事故が起きていないのであまり考えていない」など,本音を聞くことができる。さらに聞くと「この施設の事故・災害はどの程度発生していますか」と尋ねると「事故なんかないですよ」「昨年起きたようです」「たいしたことない事故でした」「詳細はよくわかりません」など様々な答えが返ってくる。では最後に「事故・災害を起こすとどんな責任がありますか」と聞くと「上の人が責任を取る」「自分にも責任がある」「科長の責任と自分の責任」「面1.はじめに2.安全研修における意見と問題点の整理職業訓練における安全衛生活動の重要性とその意識付け安全研修の効果的な実践とその考察

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