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課題を実施する。初めは時間がかかるものの,訓練生は技能検定3級,そして2級水準の部品図作図能力を手書き製図により身に付けていく。この“バラシ”作業が,若年者ものづくり競技大会の競技課題となる。3.1 機械製図(CAD)職種の概要今回,我々が目標とした競技,機械製図(CAD)職種について示す。若年者ものづくり競技大会は毎年8月に開催され,機械製図(CAD)職種には30人程の若者が参加し技能を競い合う。機械製図(CAD)職種の競技課題は競技当日に公開され,競技開始とともにA3用紙に描かれた機械の組立図が配付される。競技者は,その中の指定された部品を持参したCADソフトによりJISの製図規格に準拠する部品図を作成,“バラシ”を行い,図面データを紙で出力するとともに電子データを提出する。CADの操作技術だけではなく,機械製図に係る図面力を競うものである。参加者は年々増加し,参加募集予定数を上回る競技職種になっている。参加校の多くは,職業能力開発大学校や技術短期大学校であり,他の職種と比べ高校からの参加が少ない。毎年入賞する校もあり,校指導者の指導技法の高さがうかがえる。機械製図(CAD)職種の大会は,2日間にわたる。競技前日(1日目)は受付,開会式,座席抽選,持参したパソコン類の設置,出力確認を行う。出力確認は,各選手が持参したサンプル図面によるプロッタの印刷設定を行い,関係者が補助しても良いと競技課題概要に記されている。競技当日(2日目)は,競技課題の説明後に,9時から12時50分までの競技に入る。そして昼食後,解答図の印刷出力となる。3.2 障害のある訓練生の競技大会への挑戦平成28年度から,愛知障害者校から障害のある訓練生の挑戦が始まった。全国の障害者職業能力開発施設からは初めての参加希望となり,全競技職種を通じても過去に参加実績はない。平成28年度,てんかんの障害(精神保健福祉手帳3級)のある訓練生-7-Aの参加検討を始めた。ものづくり競技大会の参加要領に職業能力開発施設の者とあるものの,障害者職業能力開発施設が募集要件に適用されるかを確認しなければならない。中央職業能力開発協会へ問合せを行い,後日参加応募要件に該当すると連絡をいただいた。訓練生Aは,一般の工業高校の機械科を卒業し,愛知障害者校のCAD設計科に入校してきた。彼には,てんかんの障害があったが訓練上に特に障害としての配慮は必要がなく,大会出場についても支障がないと判断し,若年者ものづくり競技大会へ向けた訓練を進めた。平成29年度は,感音性難聴による聴覚障害のある2名(B・C)の参加検討を始めた。訓練生Bは人口内耳によりある程度の聞き取りと会話ができる。訓練生Cは補聴器により音は聞こえるものの聞き取りと会話はできず,コミュニケーションには手話又は筆談が必要となる。彼らは高校まで聾学校で学び卒業した聾唖者である。大会に参加するに当たり愛知県職業能力開発協会を通じ,主催者である中央職業能力開発協会へ聴覚障害者の大会参加の意向を伝え,私から「情報の保障」のための提案を行った。私は愛知障害者校で訓練生から手話を学び,手話を使い訓練を進められるようになっている。中央職業能力開発協会の担当者と,聴覚障害の状況や,配慮方法について協議を進めた。競技前日(1日目)は,関係者が補助しても良いとあるため,引率者である私が手話通訳を行う。競技当日(2日目)は,競技中に引率者である私が手話通訳を行うことは,声がなく競技者へ指示を与えることが可能となり,競技の公平性や不正を疑われる可能性もあるとし,大会主催者が手話通訳者を派遣依頼することの承諾を得た。中央職業能力開発協会が初めて手話通訳を派遣するにあたり私から担当者に,派遣依頼先の情報や,手話通訳者の人数や拘束時間等のアドバイスを行った。3.3 若年者ものづくり競技大会へ向けて同大会は,過去問題が中央職業能力開発協会HPに掲載されている。課題は毎年難易度を上げ,競技レベルを技能検定2級と想定している。訓練生3.若年者ものづくり競技大会への挑戦

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