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愛知障害者職業能力開発校 前島 和雄現在,国内では,熟練技能者が技能を競い合う「技能グランプリ」,23歳以下の青年技能者が競い合う「技能五輪全国大会」,20歳以下の若者が競い合う「若年者ものづくり競技大会」,そして障害者が技能を競い合う場として「障害者技能競技大会」がある。私は,愛知県の公共職業訓練で,健常者を対象とする高等技術専門校,障害者を対象とする愛知障害者職業能力開発校(以下,「愛知障害者校」という。)に勤務してきた。技能競技大会について,高等技術専門校は若年者ものづくり競技大会,障害者校は障害者技能競技大会を目指すものと無意識に決めていた。若年者ものづくり競技大会は,全国の特別支援学校や障害者の職業能力開発施設からの出場は過去一度もない。しかし,ある日,日本障害者フォーラム(JDF)の障害者差別解消法のパンフレット表紙の「障害のある人もない人もチャンス・待遇は平等」1)の言葉が私の目に留まった。障害のある者はどちらの競技大会にも参加が可能ではないだろうか,技能があれば,障害のある人もない人も公平に評価がされるべきである。そして,愛知障害者校で障害のある訓練生達と出会い,平成28年度から若年者ものづくり競技大会への挑戦が始まった。本稿は,障害のある訓練生の若年者ものづくり競技大会 機械製図(CAD)職種への取り組みを報告する。また,彼らが大会に参加する機械製図(CAD)は,マニュアル化ができない極めて難しい技能の競-3-技である。本稿を通じ,機械製図の訓練技法が同系職種の方々に,少しでも参考になれば幸いである。愛知障害者校は,国立県営の障害者を就職に導くための職業能力開発施設である。愛知障害者校には訓練科が5科あり,その一つであるCAD設計科は,機械設計者・CADアシスタント職の就職を目標に職業訓練を実施している。CAD設計科の1年訓練(1400時間)の実習を述べる。表1に指導の訓練カリキュラムの概要を示す。愛知障害者校ではCAD設計科との名前であるものの,8月まで「図面を描くことができる」を訓練目標に,手書きによる製図作業を行う。その後9月から2次元CADを指導する。CADは設計者のための支援ソフトでありツールである。製図の知識ある設計者ならば短期間で習得が可能になる。愛知障害者校の訓練は手書きによる製図技能習得から始まり,2次元CADによる設計製図,1月から3次元CADを学ぶカリキュラム設定になっている。8月までに,手書き製図訓練により「図面を描くことができる」技能を習得する。そしてその技能にCAD操作技能があれば,入校後の短期間で十分に若年者ものづくり競技大会に挑戦することができると考えた。「図面を描くことができる」とはどのような技能であろうか。図面を読む技能と描く技能とは異なる。図面を描く技能を持たない者は,「第三角法の投影法ができれば良い」とするであろう。しかし,1.はじめに2.愛知障害者校の訓練指導法平成29年度職業能力開発論文コンクール 厚生労働大臣賞(入選)受賞障害のある訓練生の若年者ものづくり競技大会への取り組みについて

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