4/2018
28/36

ンダナオ島の高地で生活する人々である。近年ではこれらの少数民族の伝統的な宗教生活は変容しつつあり,特に若者世代では平地に住みアメリカの文化になじむなどの変化が見られる。宗教文化圏は時代や社会情勢,政治などの変化により特に若年層の精神,思想,生活様式などに大きな影響を与えている。まとめ (可能性)・PH人の若者にもまだキリスト教による価値観が残っている。(家族思い,親戚付き合い,高齢者への尊敬,友達付き合い)・キリスト教の行事は民族が一体感になれる。・キリスト教の道徳的な生活様式を持つ。 (問題点)・インターネットによるグローバルな世界の情勢がある種の人々に悪影響を与える。・アメリカ的な価値観の個人主義が若者層では普通である。・アメリカ文化の影響が強すぎてPH人のアイデンティティが問われている。・若者層の宗教離れが都市部では若干見られる。・若者の倫理・道徳観に影響を与える問題点は4つある。それは麻薬の蔓延,政治の腐敗(汚職),貧困,失業率である。・麻薬はPHでは子供から高齢者まで社会のあらゆる階級に蔓延しており,現政権はこれを根絶することをスローガンにした。麻薬対策はかなり過激で,ある調査によれば6000人以上の麻薬利用者・販売者が関係政府機関により殺害されたという。国連でも人権問題として取り上げられたが,問題は麻薬が貧困と密接に関係している点にあることが原因であると言われている。・PHの貧困の原因は,人口の10%の富裕層が富を独占し,国民の70%が国の定める貧困ラインに達していない。農漁業を中心とした生計は社会情勢,大規模開発,気候変動などにより安定せず,それらの地域から都市に仕事を求めて移動して,マニラの人口流入問題は大きな社会問題化となっている。-26-・失業率は23.9%になり,都市・農村を問わず大きな社会問題である。これは構造的な問題であり簡単には解決できないが,政府は長期的視野に立って問題に取り組む必要がある。産業の構築(特に核となる工業の確立,アセアン地域での貿易の拡大等),若い優秀な人材の育成と,海外との交流(英語圏の利点),PHの特性を生かした産業の育成,小学校からの基礎職業教育,高等学校以上の高度職業技術教育などの制度により多様な職業に対応できる人材育成が必要。(PHは人口ボーナスの国である)2.10 開発・人口現政権はPHの諸問題(貧困,都市の交通問題,産業育成,失業率,経済の確立等)の解決のため,「Build,Build,Build」というキャッチフレーズで全国的な開発計画を立て,2023年までの着工,竣工する開発計画を発表し,一部はすでに着工している。内容は大型インフラ開発75件,中小規模の開発を含めると約400件にのぼる。PIP(公共事業投資プログラム)の総額は8兆4000億ペソになる大プロジェクトである。大型インフラ事業のうち18件は鉄道事業,地下鉄建設事業,都市間鉄道,高速道路建設事業,島間橋架橋事業など多岐にわたる。これらの事業はNEDA(国家経済開発庁)ですでに承認されている。これらの背景には次のような問題による。マニラなどの大都市においては地方からの人口流入で都市機能はオーバー状態である。例えばごみ処理,上下水道の整備,電力の供給不足,慢性的な交通渋滞による移動の問題,麻薬がらみの犯罪増加,不法占拠者の増加,火災の増加,スラムの拡大等。これらの状況はマニラだけでなく,セブ,ダバオなどの他の都市でも共通な問題である。また,最近頻繁に起こる地震や台風高潮による災害への対策の遅れ。また,経済的な側面からは,好調なGDPの数値に見えるように,PHはアセアン諸国の中で経済発展は国内外からの投資は活発で,さらなる経済隆興の起爆剤との意味合いもある。また現政権が経済,外交に心配な世評を払拭する意味合いもある。しかし,これらの開発ブームにはいろい

元のページ  ../index.html#28

このブックを見る