4/2018
27/36

-25-・多種多様な文化がそれぞれの島に存在する。・キリスト教の影響が強い。・PH人の気質は,朗らかで,明るい,クヨクヨしない開放的である。・家族思いで,年長者を敬い,友人関係を重要視する。・英語圏なのでインターナショナルな人材が多い。・男女同権で女性の社会進出が活発。 (問題点)・スペイン人の気質が見られ,傲慢,ドライ,プライドが高い,時間にルーズ等。・PH人のアイデンティティが問題になっている。長い間の植民地統治と急激な近代化による影響。2.9 宗教宗教は人々の世界観,価値観の基盤となり,精神世界の根幹を成す。また人々の生活感,倫理,道徳,にも大きな影響を与える。PH人のキリスト教などの宗教を理解することはPH人の理解に通じるものである。PHには大きく分けて3つの宗教文化圏がある。キリスト教文化圏,イスラム文化圏,山岳アミニズム(精霊信仰)文化圏。イスラム文化圏は主としてPH南部に分布する宗教で13のエセニックグループに属しており,その大部分はミンダナオ島やスールー諸島を中心にしている。この宗教文化圏はキリスト教以前に存在し他のアジア地域,中国などと活発な商業活動を行なっていた。第二の宗教文化圏はキリスト教文化圏である。16世紀からのスペインによる植民地統治において全国的に広まり,ほとんどが平地に住む。スペインの植民地政策により各地に教会を中心とする生活圏が構成され,人々の精神文化に多大な影響を与えた。1898年以降のアメリカ植民地統治期にはプロテスタントの教会が伝道を開始し,現在は様々なプロテスタントの教会に所属する教徒もいる。プロテスタントを含めキリスト教の信者は国民の95%以上と言われる。第三の宗教文化圏は高地で生活する少数民族を中心とする山岳アミニズム(精霊信仰)文化圏で,ルソン島北部の山岳地帯のイフガオ族,カリンガ族,ミンドロ島のマンヤン族,さらにパナイ島やミ2.8 文化・民族PH人は新マレー系人種の子孫で,言語学的にはタガログ族,イロカノ族(ルソン島北部)など8つの民族に分かれる。大半が平地に住み農業,漁業,商業などに従事している。PH全人口の一割弱を占めるムスリン族,マラナオ族,クウスグ族など13の民族が主としてミンダナオ島南西部,スールー諸島,パラワン島南部に居住し,農業,漁業,商業に従事している。キリスト教がPH諸島に伝えられたのは16世紀だが,それ以前にイスラムはPH南部に住み,国の影響の及んでいない山岳地帯には,アミニズム(精霊信仰)を信じているイフガオ族やボントク族のように階段状の水田(ルソン島北部イフガオの棚田は有名)を営むが大半は焼き畑農業を営む。PHにおける中国系の人々(華人)の数は華僑のネットワークや二国間の政治関係で急激に増加している。PHの文化は歴史が物語るように他国からの影響を受け,ごちゃまぜ(こちらでは「ハロハロ文化」という。)である。PHは歴史的に見ると,まず中国,インドの影響を受けた。16,7世紀には中国人は多数来たがインドの文化は地理的辺境の地で会ったPHには及ばず間接的であった。14世紀にはイスラム教徒と商人によりイスラム文化が強まり,建築,音楽,舞踏,食生活,服装などに影響を与えた。スペインの植民地化が進むと中国文化の影響を日常生活の中に浸透し,儒教的道徳観長幼の区別,長を敬う家族制度,人徳を磨き,分をわきまえた人間つきあい等が見られた。1521年のキリスト教の伝来,急激にキリスト教化が進み,宗教色の濃い文化が生まれた。また,スペイン人の気質(派手好き,移り気,情熱的,尊大で傲慢態度等)がPH人に広まっていった。アメリカの植民地化が進むと,英語が教育,文化に浸透しアメリカ文化は急激に進み現在においても大きな影響を与えている。PH文化はアセアン諸国の中でも特異な発展を遂げて,現在に至っている。まとめ (可能性)・PHをたとえると,ハロハロ(ごちゃまぜ),サリサリ(多種多様)といえる。

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る