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国立職業リハビリテーションセンター 上田 典之主体的に学び,考え,行動できる人材をどのように育成するのかについて,ここ数年,学校教育ではアクティブ・ラーニングの考え方が浸透しています。これは,2012年8月28日の文部科学省中央教育審議会の答申としてまとめられた考え方であり,教師と学生・生徒がコミュニケーションを取りながら「能動的な学修」への転換を促すものとしています。この「能動的な学修」については国立職業リハビリテーションセンター(以下,「当センター」という。)では従来から,個別の職業リハビリテーション計画に基づいての個別訓練・個別指導という形で行われ,その際必要な障害への配慮のもと技能の習得が実現されていました。本件では,職業訓練(以下,「訓練」という。)の一部で行われてきた集合訓練・講義形式での「情報セキュリティ」訓練をアクティブ・ラーニングの考え方を参考にして,グループワーク形式にデザインした例を紹介しました。この際の注意として,発達障害者や精神障害者等の特別な支援が必要な障害者(以下,「特支者」という。)の受け入れに特化した職域開発科ではなく,私が当時所属していた特支者以外の身体障害者も共に学ぶいわゆる一般科(以下,特支者の受け入れ口に特化した職域開発科以外の訓練科のことを「一般科」という。)においての実施上の配慮とその結果についてまとめた点です。特支者の占める割合は一般科でも増えてきておりますが,一般科において,特支者の苦手なことを避ける訓練をするのではな-3-く,どのような配慮を行うと特支者にとってもよいのか,また,その工夫の効果はどのようなものかについて検証しました。なお,前提条件として特支者が訓練を継続できなくなった場合は,フラッシュバックなどを回避し,発言の順番が来ても発言を見合わせるパスができる環境をつくることや見学だけでなく途中で訓練を離脱することも可能としての環境での訓練を同意のうえで実施しています。本文に出てくる全体の訓練生は40名,アンケート対象者はそのうちの特支者15名(うち回答者15名)となっております。2.1 情報セキュリティの訓練従来から情報セキュリティの訓練は20名前後を一単位として映像資料と紙ベースの資料提供を基本とした集合形式にて行っていました。2.2 特支者の背景特支者はコミュニケーション能力をはじめとして,場面理解や抽象的理解力,言語理解に弱さがあるといった能力のアンバランスさにより,場面によってはグループワークで学ぶスタイルが苦手な場合があります。このため,「人前で何を話したらいいかわからない」「変なことを言ったらどうしよう」「頭が真っ白になって何もしゃべれない」「普通になりたいけど普通とは何だ」「がんばんなきゃいけないけど何を頑張らないといけないかわからない」1.はじめに2.背景平成29年度職業能力開発論文コンクール 特別賞(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞)受賞〜一般科における発達障害者等が参加するグループワークでの配慮〜障害者に対する職業能力開発

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