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表3 障害分類別 理療就労状況(人)図4 就労した職種(人)度分類において,あマ指師の免許者は弱視ろう者100%,全盲難聴者91%と高い割合で理療就労に結びついていた(表3)。また,職種においては,開業11名,訪問マッサージ9名,治療院8名の順に高かった(図4)。今回の調査で約半数の学校が盲ろう者を受け入れ,21年間に76名が卒業していた。そのうち,理療に関する免許取得者はあマ指師で85%,はり師で62%,きゅう師で58%と高い割合で取得していた。また,免許取得者のうち理療就労に結びついたのは88%であり,そのうち,あマ指師での就労が71%であった。さらに,あマ指師での就労は,弱視ろう者100%,全盲難聴者91%であったことから,わが国独自の視覚障害者の職業である理療が盲ろう者の職業としても重要であることが示唆された。卒業生のプロフィールは,20代から40代において,それほど差はなかったが,聴覚障害を先に発症している割合が高かった。また,職歴を有している者が70%以上と高い割合であった。このことは,視覚障害の進行により職が続けられず,就労機会を求めて理療に進むケースが多いと考えられた。情報の-14-発信・受信の手段において,読み書きの手段では,墨字,点字のどちらかが使えており,補助的に録音物を使用していること,聴く話す手段では,ほとんどが音声を使用していることなどから,個人での学習手段が確立されていることが伺えた。授業の講義に関する配慮において,弱視難聴者は支援件数が多く,その支援内容が多岐にわたることから,様々な媒体の活用を試し,早期に個別に見合った支援方法を確立する必要性が見出された。全盲難聴者では,視覚に対する配慮が難しいことから,触覚と音声に工夫を重ねて支援する必要がある。使いやすい録音物の再生機器,点字ディスプレイなどの触覚を用いるためのパソコンの活用が重要であると考える。弱視ろう者では,視覚の手段を用いることはもとより,補助教員の配置,1対1での支援など人的サポート体制が重要であることが示唆された。一方,実技の配慮では,障害の程度に関わらず,特別な支援を行っていないケースが多かった。これは,理療は人体に手で触れる触覚を生かした業であることがその要因と考えられた。しかし,患者とのコミュニケーションやきめ細かい支援を行うためには,補助教員の配置など人的サポート体制を構築する必要があると考える。職種においては,開業が最も多く,次いで訪問マッサージ,治療院勤務の順である。これらの職種は,あまり単独で移動することがないこと,事務的作業が比較的容易であることが考えられた。特に,訪問マッサージは,ドライバー付送迎が多く,盲ろう者にとっては,人的支援が身近にいることが就労できる要因ではないかと推察された。したがって,就労を円滑に進めるには,免許取得後の就労場面において,移動や患者とのコミュニケーションに人的支援体制を構築することが就労の要件と考える。平成26年に我が国は障害者の権利に関する条約の批准手続を行い締約国となった。そして,改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供が義務づけられ,今後は障害者の教育や雇用に一定の支援が期待できる。その中に盲ろう者への支援として,移動やコミュニケーションにおける人的サポートの支援を導入することが望まれる。さらに,5.考察

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