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の社会参加について調査した結果,半数が仕事はしていない,3割以上が訓練は受けたことはないであったとしている(回収率:92.3%)。また,就労に関しては過去の職業として,あん摩マッサージ指圧師,はり師,きゅう師(以下,「理療師」という。)18%,会社員43%,現在の職業として理療師11%,会社員4%という結果になっている(5)。盲ろうの状態では,盲ろう者の働く意欲があっても就労に結びつきにくい現状がある中,盲ベース,ろうベースに関わらず,盲ろう者の仕事として唯一理療師が高い割合を占めており,理療師が盲ろうという状態になってもなお,仕事ができる要件を備えていると考えられる。しかしながら,盲ろう者が理療に従事している実態は把握できていないのが現状である。就労は,豊かな人生を送るのに必要な経済的自立の実現に不可欠な手段であり,また,自己実現や社会との関わりを持つことで,生きがいにつながる貴重な役割を果たすものであると考える(6)。そこで,本研究では,盲ろう者の就労の中で高い割合を占めている理療師に焦点を当て,理療師免許取得における教育上の配慮や工夫,理療で就労するための要件に関して,盲特別支援学校,養成施設にアンケート調査を行い,その実態を明らかにすることで,盲ろう者の自立と理療に関する就労支援に役立てることを目的に実施した。その内容を報告する。3.1 対象校平成28年4月現在,全国の理療教育課程を設置している盲特別支援学校・養成施設65校を対象に,自記式質問紙法を実施した。アンケート記入については,理療科主任,進路担当教員や盲ろう者を担当した教員などに回答を求めた。3.2 対象者本研究では,盲ろうの定義があいまいなため①視覚障害の範囲,②聴覚障害の範囲を定め,①,②の-12-項目の組合せのいずれかに該当する場合を対象者とした。①視覚障害の範囲a. 身体障害者手帳の交付を受けている者b. 身体障害者手帳の交付を受けていない者であって,矯正視力が0.3未満の者②聴覚障害の範囲a. 身体障害者手帳の交付を受けている者b. 身体障害者手帳の交付を受けていない者であって,入学前後に難聴と診断された者3.3 調査項目主に卒業した盲ろう者を対象に,①盲ろう者の入学実態,②卒業生の基本属性(性別,年齢,情報の発信・受信),③授業での支援実態(講義での支援,実技での支援),④理療師免許取得状況,⑤免許取得後の就労状況の5項目とした。3.4 調査期間及び回収率調査期間は平成28年6月から同年8月までとした。調査対象校65校中57校から回答が得られた(回収率:88%)。4.1 盲ろう者の入学実態についてアンケートの回収できた57校中,盲ろう者を受け入れていた学校は27校(47%)であった。また,平成7年から平成27年の21年間に76名の盲ろう者が卒業していた実態が明らかとなった。4.2 卒業生の基本属性について盲ろう者の卒業生76名中,有効回答数は60名であった。性別は男性44名(73%),女性16名(27%)であった。年代は30代21名(35%),20代17名(28%)の順に多かった。身体障害者手帳を有する者は視覚で54名(90%),聴覚で33名(55%)であった。そのうち,視覚と聴覚を合わせた重複による重度障害の認定を受けた者は42名(70%)であった(表1)。また,読み書きの手段では,墨字44名,点字133.方法4.結果

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