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<参考文献>直後の若者から,企業等で管理職として活躍する中堅は元より,定年後の第2の人生を見据えた方,働く中で少しずつ獲得してきた知識や経験を学術面から再整理し知的資産として後世に伝えたいと考える方など,年齢的にも志望動機の上でも,実に多様な方が学生として集まって来た。私たちの試みが成功したのを見て,その後,国公私立の多くの大学が筑波大学のやり方を真似て,社会人に大学院の門戸を開いたのである。現時点で,俗にビジネススクールと総称されるMBA(Master of Administration)やMOT(Management of Technology)相当の学位を与える経営系専門職大学院(ビジネス分野,MOT分野)は,文部科学省調査によれば全国に32大学院ほどあるが,その在学生の実に90%が社会人である。筑波大学における私たちの試みが,日本の生涯学習社会の扉を開いたと言える。何を伝えたかったかというと,大学や職業能力開発総合大学校を卒業し企業等に就職すれば,それで安泰ということは決してないということである。大すずき ひさとし略歴工学博士(東京工業大学),日本OR学会フェロー,前横幹連合会長1976年 東京工業大学工学部助手1988年 筑波大学助教授1993年 筑波大学教授2001年 筑波大学大学院ビジネス科学研究科長2009年 筑波大学副学長2013年 筑波大学名誉教授2013年 (独)科学技術振興機構研究開発戦略センター特任フェロー2015年 4月より大学共同利用機関法人情報・システム研究機構監事専門:数理計画法,経営科学-3-(1) 国立社会保障・人口問題研究所,日本の将来推計人口(平成29年推計)報告書,人口問題研究資料第336号,2017年(2) 鈴木久敏,「社会人大学院で学ぶ 筑波大学大学院の社会人受入れ」,教育と情報 409,1992年,pp.14-19(3) 鈴木久敏,「10年の歩み:設立に至るまでの経過(設立前史)」,筑波大学夜間大学院創立10周年記念誌「新世紀を拓く」,1999年,pp.3-17学や大学校で習得した知識や技能は,習得した傍から陳腐化が始まっているということである。それを防ぎ,常に第一線で活躍したいなら,日々,学び直しが必要なのである。重要なのは,学び習得した知識や技能・技術それ自身にあるのではなく,むしろそれらの学び習得の過程で自分自身が身に付けた「学び続ける意欲」や「知識・技能・技術の学び方の獲得」ということである。可能ならば,第三者が確立した知識・技能・技術を知る,学ぶという受動的な態度だけに止まらず,さらに一歩進めて,新しい知識や技能・技術を自ら紡ぎ出す能力を体得することも同時に心掛けて欲しい。人生100年時代を生きる君たちは,まだ80年近い時間を生きることになるのだ。3.おわりに

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