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④通訳抽選制 今大会からすべての職種において,通訳の抽選制(不正防止のため大会4か月前にくじで担当職種を変更する)が導入された。前大会の製造系15職種からすべての職種へ拡大となり,十分な事前訓練ができなかった職種もあった。また,専門的な知識の欠如から,誤訳につながったケースも一部聞かれた。⑤選手,エキスパートの対応力,適応力不足 これまで,事前公開された課題は繰り返し練習して技能を高めるといったものが中心であった。外部作成課題など,実際の仕事の中で求められる課題,それまで培った技能を問う課題に変わってきている職種に対しては,対応力が欠如していたのではないかという指摘が多く寄せられた。技術代表は,技能競技大会が円滑に行われるように,競技運営委員会(CC:Competition Committee)や,1年に1度以上開かれる総会(GA:General Assembly)に出席し,競技規則の改正等を審議する委員である。競技大会が行われる年は,開催地に大会準備週間の時も含めて2度出張する。大会の翌年の年は総会という名前で,およそ1週間,CCやカンファレンスなど様々な研修プログラムに参加する。日本チームに対しては,競技規則,運営規則,倫理行動規定,安全衛生環境規則(HSE)など改正点を含めて,選手,エキスパートが理解するよう努める責務がある。アブダビ大会からは,新人エキスパート(専門家,競技委員にあたる)に対してアクセスプログラムという研修プログラムを実施することとされ,受講の証拠書類の提出を求められた。アクセスプログラムにはワールドスキルズの基礎知識,競技課題の採点方法が含まれる。大会中のトラブル発生時には基本的に職種管理チーム(SMT:Skill Management Team)で解決に当たる。しかし,技術代表を呼んで欲しい,あるいはSMTの解決案に納得できないといった場合が起こる。その際,技術代表補佐(TDA:Technical -33-Delegate Assistant)と協力して,その職種のチーフエキスパートやJP,職種競技マネージャ(SCM:Skill Competition Manager)との交渉を行う。それでも解決しないときは競技運営委員会ディレクターと交渉することとなる。今大会からはTDAが2名体制となり,迅速にかつ,スムーズにトラブルに対処できた。中央職業能力開発協会の釜石部長,常盤次長(現 部長)のお二人には謹んで謝意を表したい。ライプチヒ大会,サンパウロ大会では技術代表が各競技職種の審判長(JP)を割り当てられ,SMTのメンバーとして,大会中の運営を監督する役割を担っていた。経験豊富な技術代表の場合,複数のJPを務める場合もある。アブダビ大会からは,26職種で新しい制度となり,JPのSMTとしての役割はSCMに引き継がれることとなった。他の職種は旧制度のままである。またSMTで解決できなかったトラブルを紛争解決と呼んでいるが,このプロセスを管理する仕事については新しく競技運営委員会代理人(CCD:Competition Committee Delegate)が当たることとなった。国際大会の優勝者は名誉を得るが,一部の国では同時に,報奨金,兵役免除など,様々なインセンティブがあり,このことが選手,エキスパートともに不正を誘発する要因となっていることは否めない。実際,サンパウロ大会では12件が聴聞委員会に上がった紛争が,アブダビ大会では16件あったとされる。申し立ては却下されたものもあるが,エキスパートの追放,技術代表の権利制限,選手の得点の減点などが処分として起こった。筆者の場合,サンパウロ大会では電工職種で3件発生し対応に追われたが,今回は広告美術職種(写真1)で,チーフエキスパートやJP,JPチームリーダーとの話し合いの中で解決する問題が生じたものの,順調に競技会を進めることができた。職種定義の内容で,ディスカッションフォーラムできちんと6.技術代表の役割7.審判長の役割

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