2/2018
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現在,職業能力開発総合大学校で学ぶ君たちは,どんな時代,どんな社会を生きるのであろう。政府は,内閣に人生100年時代構想会議を設置し,「一億総活躍社会実現,その本丸は人づくり。子供たちの誰もが経済事情にかかわらず夢に向かって頑張ることができる社会。いくつになっても学び直しができ,新しいことにチャレンジできる社会。人生100年時代を見据えた経済社会の在り方を構想していきます。」と謳っている。謳い文句は素晴らしいが,本当に実現するのだろうか。2017年に国立社会保障・人口問題研究所は,平成27年国勢調査を基に,日本の将来推計人口を発表した(1)。出生率と死亡率のどちらも中位と仮定した場合,2060年には日本全体の人口が約9,300万人になるという。2018年現在の推定人口が12,600万人だから,現在の人口の3/4に減少してしまうことになる。ちなみに2100年には約6,000万人と,現在のほぼ半分になるとの恐ろしい予想である。まさに「人口減少社会」の到来である。総人口以上に,より深刻なのはその年齢構成である。同推計によれば,2060年時点の人口9,300万人に対して,75歳以上の高齢者は約25%,65歳以上だと約40%,60歳以上だと約45%になるという。他方,0~14歳の年少人口は約10%と予想しており,結果として15~64歳の生産年齢人口が約50%となる。すなわち,社会を牽引し経済的価値を生み出す中核世代の一人が,他の一人(高齢者か年少者)を扶養しなければならない。これは待ったなしで確実に起こ-1-る現象なのである。なぜなら,今から急に少子化対策に本腰を入れ,出生率を引き上げることができたとしても,それが人口の年齢構成に影響するまでには,かなりの年数を必要とするからである。一方,科学技術の世界では,IoTだ,AIだ,ロボットだ,ビッグデータだ,あるいはIndustrie 4.0だ,Society 5.0だと,様々な耳慣れない言葉が流布している。総合科学技術・イノベーション会議(内閣総理大臣を議長に関係大臣や民間の有識者議員で構成される日本の科学技術政策の司令塔)は,Society 5.0を「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより,経済発展と社会的課題の解決を両立する,人間中心の社会」と定義し,狩猟社会,農耕社会,工業社会,情報社会に続く,第5世代の社会を指す概念で,「我が国が目指すべき未来社会の姿」としている。AIやロボットが高度に発展し自動運転技術が普及すれば,タクシーや長距離トラックのドライバーは不要となる。工場や建設現場のマシンオペレーターなど,これまで熟練技術が必要とされていたものづくり現場の仕事も,AIやロボットに代替されて行くであろう。オフィスでの一般事務,銀行やホテルの窓口や受付,ファーストフードやスーパーマーケットの販売など,単純なサービス業務もAIやロボットで代替されてしまう。果ては,人間の知性が必要とされていた銀行の融資業務,保険やクレジットカードの審査業務,会計士や税理士など,より専門的で複雑な業務でも,人間のあやふやな判断より,ビッグデータに基づいてAIに判断させた方が正確で早いとして,機械に代替される可能性がある。一定のルールの下で豊富な知識やデータ,経験大学共同利用機関法人情報・システム研究機構監事 鈴木 久敏1.君たちの生きる時代変化の時代に生きる~職業大の学生たちへ~

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