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図1 ウォーターフォール型とアジャイル型浜松職業能力開発短期大学校 寺田 憲司審査員からは,IoTという産業界のニーズをとらえ,各種イベントを活用しながら学生自らが主体的に取り組むモチベーションを維持向上させ,その指導方法としてアジャイル開発手法を用いる斬新な取り組みで効果を上げていることが評価された。論文の内容についてはテーマに対するアプローチのコンセプトの明確さ,随時見直しを図り改善点を見出す事等が有効な人材開発手法として評価を受けた。一方で,学生のアンケートに基づき教育効果の検証もきちんとなされているが,取組内容が中心となり,その効果については学生のアンケート結果から推測するのみで終わっている事が指摘された。例えば,他の手法によって取組んだ学生との比較や指導員のアンケートなどがあると良いという点があげられた。IoTを導入する企業には技術とビジネスを繋ぐ力,技術を俯瞰し全体を設計する力,創造性,専門性を持ち,IoT分野と自社の製品の橋渡しをする技術者(=ブリッジエンジニア)が求められている。電気産業においても工場設備だけではなくエレベーター,鉄道設備等のインフラを支える電気系メーカでも増えてきている(1)(2)。しかし,電気系学生がIoT技術を学ぶ機会が少ないのが現状である。当校の電気エネルギー制御科では電気設備の保守管理等の技能・技術に加えて環境・エネルギー有効利用技-1-術等を修得することが主であり,その中でIoTのような現状の産業ニーズに応える指導法ができるかが課題となっている。そこで,専門課程の総合制作実習で取組むテーマにIoT技術の要素を盛り込み,新たな付加価値をつける製品開発に取り組む指導法を考案した。一番の特徴はアジャイル開発手法を応用することにより,様々な利用者の意見を取り入れることで,ものづくりの高いモチベーションを維持し,訓練生の自主性を高めるものづくりを行った点である。アジャイル開発手法は2001年にKent Beck氏,Mike Beedle氏ら17名の開発者により生まれたものであり,現在はGoogle等の情報産業をはじめとしてFBI等の他分野でも利用されている(3)。古くからソフトウェア開発では,ウォーターフォールモデル開発手法が有名である。図1に示すウォーターフォールモデル開発手法は,企画・計画・設計・実装(プ1.審査員からの評価2.背景3.アジャイル開発を応用した指導方法平成29年度職業能力開発論文コンクール 厚生労働大臣賞(入選)受賞IoT/AR製品開発における職業訓練の実践・評価〜アジャイル開発手法を応用した電気系訓練生によるグループ制作の効果的指導〜

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