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<参考文献>確認できる。これは,(学校教育とは異なる)職業能力開発施設における固有の傾向である可能性があるが,本稿の議論の範疇から大きく超越するので,この可能性については言及しない。これらの理由から,一般に教育学に関する論文等で用いられるような各種検定をはじめとする統計学的な取り扱いは困難であると考える。そこで,本稿の目的が幅広いレディネスを有する受講生が在籍するクラスにおける訓練対応であることを鑑み,最高点と最低点の差(すなわち,レンジ)により評価を行うこととする。図5および図6は両クラスにおける入所選考の結果である。両者ともにレンジが大きく,受講生のレディネスの幅が非常に大きい状態で訓練を開始していることが分かる。図7ならびに図8は,当該訓練終了時のまとめテストの結果である。プログラム学習を適用したクラスでは60点未満を取得した者は一人もおらず,入所選考結果(図5)と比較して最高点と最低点の差(レンジ)が大幅に減少している。一方,プログラム学習非適用のクラスでは,半数以上が満点を取得している一方で60点未満を取得する者が2名おり,最高点と最低点の差(レンジ)はむしろ増加している。このことから,プログラム学習は,学習到達度が低い受講生に対して特に大きな効果があると期待できる。本稿では,従来のプログラム学習教材に修正を行い,離職者訓練の特に座学分野の訓練に対して適用する具体的手法について検討した。当該手法を実際の訓練で試行し,その効果を検討したところ,学習到達度が低い受講生に対して大きな効果が期待できる可能性があることを把握した。プログラム学習は1970年代に多くの試行事例があるにも関わらず,学校教育や職業訓練の現場では,その効果が正しく評価されず,その結果,現在まで継続して適用されるに至らなかった。教育訓練の手法は,常に新しい視点で,最新の研究結果を取り込みながら発展させていくことは当然のことである。-12-[1] 文部科学省ホームページ,「「我が国の教育水準」(昭和39年度) 第2章 教育内容の充実と能力の開発 6教育方法 (2)プログラム学習」,http://www.mext.go.jp/ b_menu/hakuso/html/hpad196401/hpad196401_2_034.html,平成29年6月15日閲覧[2]宗像元介他,「座談会 私はこうしてプログラム学習を導入した―私はプログラム学習をこう考える―」,技能と技術,1973 Vol.6,pp4-11[3]松永元治,沼田光正,「私たちのプログラム学習の現状と問題点」,技能と技術,1973 Vol.6,pp22-27[4]平川光則,「電気理論におけるプログラム学習方式の授業から得た事項」,技能と技術,1972 Vol.3,pp38-56[5]鈴木克明,「インストラクショナルデザインの道具箱101」,北大路書房, 2016,pp90-91[6]波多朝,「職業訓練はどうなるだろうか?」,技能と技術,1968 Vol.1,pp51-56[7]寺崎則典,「電気理論における「記号法計算」指導法の一考察」,技能と技術,1969 Vol.2,pp49-55[8]矢口新,「論評 技能教育とプログラム学習」,技能と技術,1969 Vol.4,pp2-3[9]宗像元介他,「座談会 プログラム学習の技能訓練への適用化」,技能と技術,1969 Vol.4,pp4-8[10]平川光則,「技能訓練へのプログラム学習の導入」,技能と技術,1969 Vol.4,pp17-21[11]高崎亮平,「PL/TM試みの試み―事業所内訓練における事例」,技能と技術,1969 Vol.4,pp22-28[12]安江節夫,「職業訓練とプログラム学習」,技能と技術,しかしその一方で,真に効果がある手法については,世代を超えて指導技法として継承されるべきであり,教育訓練に「流行り・廃り」があってはならない。本稿では,旧来的な手法である「プログラム学習」に修正を加えることにより,近年問題となりつつある「幅広い特性を持つ受講者への教育訓練」について,その可能性を見出すことができた。今後は,教材の数と適用事例を増やすことにより,更なる検証を行いたい。また,本教材を活用した訓練を実施するとき,受講生どうしの教えあい,学びあいが必要となる場面がある(問題が早く解けた受講生が,分からずに悩んでいる受講生に説明するなど)。この場面で,アクティブラーニングの手法を効果的に活用することにより,一層の訓練効果が期待できる可能性がある。今後は,プログラム学習とアクティブラーニングの相乗効果についても検討していきたい。5.まとめ

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