4/2017
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一般財団法人アーネスト育成財団 小平 和一朗株式会社アーネストワン 西河 洋一製造業でサービス業との融合化が進む。モノづくりとサービス業である販売事業を一体化することで,製造から販売に至るまでの流通過程を自由に,効率的に管理することができる。消費者の意向を反映した商品を,流通過程の無駄を省くことで,安価に顧客に提供することができるからだ。サービス業へのその移行過程を分析すると,強力なリーダーシップのもと,経営者が先頭に立って,長期戦略に取り組むことで,新しいビジネスモデルを確立している。非常識といわれるような業務改革に,経営者は組織構成員に対して,リーダーシップを発揮し,方針と具体的な戦術を明示するとともに,現状のエンジニアリング力を把握した上で取り組んでいる。現状認識の上にたって,製造から販売に至るモノづくりの仕組みに技術的な強みを作り込み,サービス業に進出している。競争優位な市場の形成をするための戦略を立案した上で,進出しているともいえる。モノづくりの基本であるQ(品質)C(原価)D(工期)を抑えた上での技術変革に取り組むことで,競争優位な市場を形成している。まさに技術経営を実践している。製造業とサービス業との融合化にあたっては,自社の置かれた立場を正しく認識し,組織を高い目標に向けて奮い立たせるための具体性のある目標設定をした上で,非常識と言われても実行可能な戦略を-7-立案し,強力な指導力を発揮することが求められる。併せて,組織内や顧客などとのコミュニケーションが重要である。本稿では,イノベーションと言われる変革に取り組む経営者のセンスウェアについて,筆者の一人である西河洋一アーネストワン会長(以下「西河」)が取り組んだ,建設業から不動産業へのモノづくりの変革の事例を取り上げて,職業大フォーラム2016での内容1)をベースに,さらに詳細に報告する。2.1 経営者のセンスウェアの4要素センスウェアについて,筆者の一人である小平和一朗アーネスト育成財団専務理事(以下「小平」)は「センスウェアはハードウェアとソフトウェアを包含している。それは,ハードウェアとソフトウェアの具現化にあたって,暗黙知である広義の感性をセンスウェアでデザインしている」と定義している。2)さらに筆者らが取り組んだ『経営に求められるセンスウェア』3)と題する先行研究では,不動産販売事業に取り組む経営者のセンスウェアを図1のごとく整理するとともに,経営者のセンスウェアは4要素で構成されていると報告している(図2)。その報告では,ハードウェアとは住宅建設であり,ソフトウェアとは不動産販売であり,センスウェアとは経営管理であるとしている。その先行研究の中で経営者のセンスウェアとは,現状認識力,戦略立案力,指導力で構成されている1.はじめに2.不動産販売事業経営者のセンスウェア-モノづくりのサービス・イノベーション-経営者のセンスウェア

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