4/2017
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図1 今までの暗黙知を形式化する手法図2 オペレーションの形式化の新手法制や風土が大きく異なっているが,この違いを理解している日本人は少なく,かつ現場で何が発生しているのか理解できておらず,理論上だけで論議している人が多いのが現状である。オートメーション化などの波に乗って,機械化・省力化が進み,匠のノウハウ継承ができずスキルが低下し,日本型ものづくりに必要なワイガヤ環境が劣化消失し,生産力の低迷に繋がったと推測される。生産性向上を目指すには,今までの製造ノウハウを可視化し,OJT,OFF-JTで学ぶスピードを向上させることが重要である。2007年問題以降,匠の技術継承の重要性が叫ばれ,各社がオペレータを育成することにチャレンジしてきたが,今なお2007年問題は解決されていない。これは,暗黙知のノウハウが形式化されていないことから発生していると考える。まずは,今までの暗黙知を形式化する手法について記述する。3.1 今までの暗黙知を形式化する手法今までの暗黙知を形式化する手法は,操作履歴を元に何を見て・触り・聞くなどしてどう判断したかをヒヤリングし,かつ文献や知識などを元に行うというものである(図1)。この手法の場合,ヒヤリングは,その瞬間ではなく数日遅れて行われるため,形式化すべき情報すべてを洗い出すことができない。したがって制約の精度が悪くなる。また,聞かれたことに答えるという対応になるので表層的な事柄しか出てこない。さらにヒヤリングされた各人の制約の考えがバラバラ,といったことがあり,十分な形式化ができていない。多品種少量生産のために段取り替えが多く,かつ突発的な受注によりスケジュールが頻繁に変わるなど,外部条件を考えてオペレーションするため,正-4-常時のオペレーションが単一でなく様々な状況を考慮したものとなっており,ヒヤリングで洗い出せるケースに限界がある。さらに異常時の操作を含めるとすべての事象を洗い出すことができていないのが実情である。しかし,日本のオペレータは,その外部環境を理解し無意識に対応している。外部環境の変化があまりない海外の現場では考えられない。したがって海外で成功した手法が日本では必ずしも通用するとは限らないことを知るべきである。日本国内の生産性向上を目指すには,ベテランや中堅オペレータの育成,オペレーションの形式化の精度向上が重要であるが,それには,海外と国内の環境の相違等を踏まえて,ローカルに取り組んでいく必要があると考える。オペレーションの形式化の新手法は,何を見てどう判断したかの操作履歴を元にヒヤリングするのではなく,IoTにより可視化することで,下記のように無意識に判断している要件を意識化させ,それを形式化することである(図2)。4.1 入力を検知するためのIoTオペレータの五感を暗黙知から形式知化するには,下記のようなIoTの活用があげられる(図3)。視覚:ドローン,アイトラッキング,動画聴覚:振動センサー4.オペレーションの形式化の新手法(2)3.生産性向上を目指すには

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