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図10 工期の短縮とイノベーション図11 各種ブランドの関係手形で行うことができる。従って,工期の短縮ができると,土地取得から販売までの期間が短縮することで,手形の支払期間より短くなった。その結果,完成後早く売れば売るほど,現金が手元に残るようになる。資金繰りが楽になり,銀行にあまり頼らずに事業の拡張が可能となった。(図10)2.6 エンジニアリング・ブランドの構築QUIE(クワイエ)とSAFE365というブランド住宅は,一般的には同質化している基礎技術で建てられていて,完成してしまうと,建物の違いが顧客には分かりにくい。差別化を図る手段として,技術のブランドであるエンジニアリング・ブランドを構築することで,顧客に強みを伝えることに取り組んだ。伝えたい強みとは,長年取り組んできた地震に強い家づくりである。アーネストワンの分譲住宅は,建設基準法で定められた壁量の1.5倍に達する耐震性能を持っていて,さらにその耐久性を上げるために開発したのが,制震装置(SAFE365)である。地震の揺れに耐える耐震性能と,揺れを抑えて住宅へのダメージを軽減する制震性能を兼ね備えた建売住宅ブランド「QUIE(クワイエ)」というプロダクトブランドの構築に取り組んだ。「当社なら約200回の震度6強にも衰えない」とのスローガンを掲げている。さらに「壁が強い家は,地震にも強い」とのコンセプトで,壁材ダイライトを,メーカーとの共同開発の「大頭釘」を使って取り付けると「2.5倍」の強度を得ることができると伝える。さらに壁材に「筋かい」を取付けると実質壁倍率は4.5倍に達すると,-12-家づくりの強みを説明している。図11に各種ブランドの関係を図示した。エンジニアリング・ブランドSAFE365が,プロダクトブランドQUIEを支えるとともに,アーネストワンというコーポレートブランドを支えている。建設業から不動産業への転換をする際の経営者のセンスウェアの構成要素を,具体事例を見ながら検証してみる。3.1 現状認識力3現主義で時代を見る目を養う現状認識力とは,現場,現物,現実の3つの「現」を具現化する能力である。実際に仕事をオペレーションし,運用することの中で得られる実像を正しく認識する能力である。時間軸でいうと,過去の経験や実績の上で現状を認識する「時代を見る目」のことである。不動産業へと進出したのは,住宅づくりに関しては,どこにも負けない技術やアイディアをもっているとの認識があったからだ。実際,不動産業者から仕事を受注する立場で,革新的な工法を発注側の仕様に反映させるのは簡単なことではないし,採用されたとしてもメリットを享受することは難しい。現状では保有する技術やイノベーティブなアイディアを生かすことはできないと現状認識し,不動産販売業へ転換した。3.不動産経営者のセンスウェアの検証

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