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図3 製造業(建設業)からサービス業(不動産業)家を建築し完成させるビジネスモデルでは,企業の成長に限界があることに気付いたからだ。不動産事業者からの仕事を待つビジネスモデルでは,受注倍増という革新的な事業の拡大は望めないし,許されない。売上計画を自ら立案することはできないし,売上を自社のみが倍増することなど絶対に許されないと考えたからだ。今のままでは,事業の拡大は望めない。このビジネスモデルは,他者である不動産業者に主導権があるからだ。(図3の上段のモデル)住宅づくりに関しては,どこにも負けない技術や革新的な家づくりのアイディアをもっていた。そのアイディアを実現させるには,不動産事業者に話をして,革新的な工法を顧客の仕様や見積もりに反映させるのは簡単なことではない。また,このままでは上場企業になる夢をかなえるための革新的な事業の拡大をすることはできないと認識し,自らが不動産販売業へと転換することを決断した。自ら土地を取得し,家を建築し,販売するという不動産事業に進出することで,販売,保守までのビジネスに取り組むことができると確信したからだ。(図3の下段)3)2.3 経営目標の設定不動産事業に進出にあたっての経営コンセプトは,「家を買えない年収層が買える住宅の販売」をするとした。実際,賃貸で支払っている額より低いローン支払となる戸建分譲住宅を作ることに目標を置き,土地を含めた金額が,その価格帯の家の販売に取り組んだ。-9-賃貸で家を借りていた時には,家賃として大家(他人)への支払いで消滅してしまうが,分譲住宅を購入した場合には,同じようにお金を支払っても,住宅ローン返済なので家が資産として残ることになる。アーネストワンの企業ポリシーは「お客様に最高の満足を提供したい」「誠実な事業を通し,広く社会に貢献する」とした。「理想の居住空間の提供によってお客様の幸せな生活ドラマを演出する」は,当時,西河が作った企業理念の一部である。理想の居住空間を機能・性能を落とさずに安価に提供することで,お客様に最高の満足を提供することに不動産事業者として取り組んだ。モノづくりのQCDの3要素に対して目標を設定し,技術経営を実践した。(1)Q(品質)加工精度を向上する。一階床レベル重点管理をして,誤差の起こりにくい家つくりをおこなうこととした。狂いが起きない集成材を使い,工場で加工を行うプレカット加工へと切り替えることで,住宅品質の均一化を図る。加工精度を向上させることで,すり合わせ加工や手直しを無くす工法の開発に取り組んだ。ノミやカンナを使わないで組み立てることができる家づくりに取り組んだ。基礎の工程,構造軸組完成の段階に第3者機関の検査を入れて,作業品質の向上に取り組んだ。(2)C(原価)1棟を建てる家の製造原価を1棟1,200万円から600万円とし,原価を半分にする目標を設定した。(3)D(工期)工期を6ヶ月から2ヶ月に短縮する工法を開発し,工期を3分の1以下にする目標を設定した。2.4 モノづくり(製造方法)の改革家づくりの工業化に取り組む異業種である不動産事業に進出にあたって,いか

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