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城西大学 栗田 るみ子我が国におけるインターネットの起源は,1984年に開始されたJUNET(JapanUniversity/UnixNETwork)で,東京大学,東京工業大学,慶應義塾大学間で構築された研究用ネットワークである。1984年の通信技術の自由化からの約30年間で,日本は,通信事業者の売上高を約4倍,ICT産業の市場規模は約3倍に拡大している。日本では,1996年にインターネットの普及率は約3.3%であったが,2015年に約85%となっている(1)。教育現場においても1960年ごろからのTVによる「視聴覚教育」を皮切りに,ビデオ教材の導入,そして2000年初期にはインターネットを利用した「e-learning」が盛んになった。このようにIT技術の進化は数年の間に大きく進展してきた。このような中,日本では積極的に様々な分野でITを取り入れたESD活動がおこなわれてきており,インタラクティブ性を有効活用した「教育SNS」が新しい学びを形成している。目まぐるしく変化する時代に,後世へ受け継ぐ知の資産として,ESDを背景とした教育手法は今後のIT教育全般に広く定着させるべき課題であると考える。2.1 持続可能な開発のための教育の経緯持続可能な開発のための教育はESD(EducationforSustainableDevelopment)と訳され(以下,「ESD」という。)2002年に開かれたヨハネスブルグ-6-サミットにおいて,地球環境問題など様々な世界的課題の解決のために人づくりが重要であるとし,当時の総理大臣であった小泉純一郎氏が提唱した。更に,2002年の国連総会では2005年から2014年までの10年間を「ESDの10年」とし採択された。また,ユネスコは,国際実施計画を作成し,ESDの10年を「すべての教育と学びの場のあらゆる局面に持続可能な開発の指針,価値,実践を組み込んでいくこと」を大きな目的として掲げた。このような教育と学びが「現在と将来の世代にわたって,環境を保全し,経済が維持され,公正な社会を実現するという,持続可能な未来をつくっていくために行動様式の変化を促すもの」としている。その最終年である2014年には,150か国の参加により,「ESDに関するユネスコ世界会議」が日本政府とユネスコの共催により,岡山県と愛知県の2か所で開催され,今後も引き続きESDに取り組んでいくことが確認された。また,2014年12月の国連総会においては,「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)」が承認され,①人格の発達や,自律心,判断力,責任感などの人間性を育むこと②他人との関係性,社会との関係性,自然環境との関係性を認識し,「関わり」,「つながり」を尊重できる個人を育むこと上記2項目が観点とされた。2.2 ESDの概要ESDは環境,平和や人権等を対象とする様々な課題への取組をベースにしつつ,環境,経済,社会,1.はじめに2.持続可能な開発のための教育〜コーポレートコミュニケーションを取り入れた職業訓練〜持続可能な社会の実現に向けた教育

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