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つつある。未然防止,予防安全である。この考え方に則れば,多様な成功事例を検討し何故成功できたのかを明らかにし,その要因を教育することで安全性が向上することになる。失敗事例による教育が悪いわけではない。失敗事例は作業時の危機感を高め,危険感受性を向上させる働きがある。それぞれの教材事例が有効に働く事象や場面を意識して活用することで,効果的な教育訓練が可能である。また,同一の状況における失敗事例と成功事例の両方を紹介することで,より効果的な教育も可能となる。安全教育は失敗を教訓にすることが多いが,日々の作業で「なぜ失敗したか」と問うだけではなく,「なぜ出来たのか」という視点から見直すことで,安全性の向上に寄与する色々な要因が見えてくるであろう。4.2 安全対策教材本教材は,過去10年間の旋盤作業に関する訓練災害の危険源を特定してリスクアセスメントを行い,リスクレベルの高い事例から安全対策教材(3)の題材とした。本研究における安全対策教材では,対象者が初学者であることを考慮して,災害を起こしてしまった行動の道筋を動画で再現することにより,危険源や災害のイメージを認識しやすく呈示することとした。また災害事例(失敗)をインパクトのある画像で見せ,次に危険事象を回避する方法を含む作業事例(成功)を見せ,何故このようにしなければいけないかを説明しながら呈示する方式を採用している。まずは動画を作成するにあたり,的確に危険源を認識させることができるような動画の構成要素について検討した。その結果,次に挙げる3つのポイントを構成要素として抑えるような動画の作成を行った。【動画に含まれるべき要素】①一連の加工作業の中の危険源が現れるタイミング(危険源がいつ現れるのか)②何が危険源なのか。 何が危険で,どこが危険源なのか。また,危険源によりどのような災害が引き起こされてしまうのか。-7-③対策案(リスクを軽減させる対策として,何を行うべきなのか)全体を通してこれらの要素を含むように統一させている。次に,実際に作成した動画を例に,危険源をより認識しやすい動画となるように検討した点について記述する。本稿では「テーパ加工のために刃物台を旋回させようとした際,勢い余って被削材や刃物によって切創する」という災害に対する動画を例に挙げる。まず動画の最初では,どの部分に危険源があるのかを表示させている。このとき,黄色の○印を用いて危険源を強調させている。(図6)次に,実際の作業を再現した動画に移る。本研究では実際に発生した過去の災害事例を分析し,動画において「災害に繋がってしまう行動」を再現することにより,より「どうしたら災害が発生してしまうのか」という点を認識しやすく提示させることができる。図7は危険行動を再現した動画の一部分で図6 危険源呈示例図7 危険行動の動画による再現

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