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る安全衛生活動はほとんど実施している。また,雇用支援機構として,平成26年度から機構版労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)を導入し平成28年度定着に向けて研修等を実施している。組織と指導員と訓練生が協力して訓練災害を減らす仕組みが構築されたので,具体的に機能し徐々に訓練災害が減少することを期待するが,基本となる部分である各種手工具及び訓練用機器の取り扱い方法を確実に指導したうえで訓練生に使用させたり,ヒヤリ・ハット報告活動やKYT(危険予知訓練)を通じて訓練中のリスクを把握し,訓練生の技能スキルや危険感受性を高める等,指導方法の改善を含め安全に関する指導を徹底することが求められるだろう。そして効果的な安全対策教材の開発が必要となるだろう。前述の訓練災害発生件数の下げ止まりの原因を受け,訓練災害の低減方策として,初学者の特性を考慮した安全作業手順を考えてみる。対象作業は普通旋盤作業とし,旋削の要素作業と関連の知識,技術・技能を習得する過程に潜在する危険源から初学者の訓練生に危害が及ばない作業手順の導出を目指す。3.1 初学者の行動特性と危険事象回避方法人間の行動を表したラスムッセンのSRKモデル(2)によれば,初学者の行動は知識ベースの行動といわれ,次のような特徴がある。1) 初めての事象に遭遇した時,意識上で内外の知識を参照し考えて対処するから,この認識プロセスには時間がかかる。2) 知覚情報の取捨選択がうまくできず,何が重要なのかわからないので優先すべき情報を選択できない。3) 経験がないため長期記憶との照合がうまくいかない。4) 判断が遅れるために決心がなかなかつかない。 その内に事態が進んでしまう。5) 行動の段階でも自分のパターンが確立していないので行動が遅れる。円滑さに欠ける。操作を-6-忘れる。このような特徴をみると,対処方法を予めパターン化し,事象に対して適当な対処方法が当てはめられることによって対処できる可能性が推測される。即ち,指導員が取得する要素作業に潜在する危険源を特定し,事前に危険事象回避の方法を決め,それを初学者に呈示し実施できるように反復練習する。この行動を要素作業の習得過程と同時に行えば,やがて習慣化した行動となることが期待される。3.2 危険事象回避のために習慣化したい作業過去10年間の旋盤作業に関する災害事例を分析し,習慣化したい危険事象回避行動を次の通りとした。1) 静止した機械可動部に触れながら行う作業はギヤをニュートラルか電源をOFFにする。2) ねじ切り作業における回転数設定の間違い等,危険事象回避が難しい作業は,加工物との距離が十分離れている場所で工具を動かしてみて,間違いがないか確認する。3) 作業領域の近くに工具切れ刃等の危険源がある場合は,危険源との間隔を十分開ける。4.1 失敗事例から学ぶか成功事例から学ぶか失敗事例から学ぶ安全の考え方は,安全とは危険な事象が発生しないことであり,安全性を向上させるためには,危険な事象の原因となるエラーや違反を明らかにしたうえで,その1つ1つに対策を講じ防止すればよいという考えである。この考えに則れば,災害事例を集め分析し,原因を明らかにし,全てに対策を講ずればよいことになる。ただ,失敗事例は割合からすれば僅かであり,事例の収集しにくさが問題となる。一方,安全とは単に危険な事象が発生していない状態に加えて,組織や作業者が将来的に見ると,発生しうる様々な事態への高い対応能力をもつことであり,安全性を高めるには,多様な変化があっても成功する能力を高めればよいという考え方が広まり3.初学者の特性を考慮した作業手順4.危険事象回避を配慮した安全対策教材

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