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アリング結果を参考にして行う。まず,指導員業務について確認しておく。現在の指導員業務は,①訓練生に対する技能・技術指導から②事業主支援まで幅広い内容に及んでいる。こうした中で,従来の①のスキルを活かしながら②のスキルに拡大していくにはどうするかが課題となっている。次は,多様な指導員業務の中で,体系活用の実践力を高めていく人材育成についてである。体系活用に関する指導員研修が行われているが,研修は短期間に集中して行うことから,どうしても詰め込み形式になってしまい,これだけで実践力は身につかない。要は研修の結果を実践にどのように活かしていくかが大きな課題である。こうした課題に対して体系の活用を積極的,効果的に推進していくには,施設におけるモチベーションの発揚が必要である。やる気を喚起させなければ行動に移らないからである。そのためには体系のメリット,必要性を自ら認識するような意識改革を進める必要がある。例えば,いつでも支援できるバックアップ体制をとって安心感を与え,「やれそうだな」という気にさせる。その上で活用スキルを実践して徐々に自信をつけさせる。さらに,数をこなすことで体系の必要性を根拠のないものをから確信のあるものに変えていく。こうした取り組みを進めることによって,指導員研修の結果が実践に活かされ,専門性の構築に繋がると考える。体系はこれまでにいろいろな活用が提案されてきたが,「何でもできることは,何にもできないことになりかねない」という問題意識から体系の活用目的を検証した。こうした活用目的を確認した上で,体系データの見直し作業における考え方を整理し,体系データの構造を改善した。さらに,体系データの見直し作業を通して体系活用に向けた課題を特性要因図に表し,その主要因を絞り込んでいった。その結果,活用に向けた課題は3つの項目に集約され,それらの要約は以下のとお-53-(1) 通達「職業能力開発体系」を活用した職業能力開発業務の推進について(2014.3.27)(2) 谷口雄治:「日本における職業訓練政策の展開と生涯訓練の概念・意義」『職業能力評価システムの日英米比較研究-職業教育訓練との関連で-』名古屋大学(2014)(3) 早川宗八郎他:「生涯職業能力開発の体系化に関する研究」調査研究報告書No.81 職業能力開発大学校研修研究センター(1995)(4) 「総合的かつ体系的な職務分析の推進に関する調査研究」平成16年度~19年度 部内資料 職業能力開発総合大学校 能力開発研究センター(2004~2007)(5)「総合的かつ体系的な職務分析の推進に関する調査研究 平成20年度~23年度」研究資料 職業能力開発総合大学校 能力開発研究センター(2008~2011)(6) 「職業能力の体系」の整備等に関する調査研究 平成24年度~28年度 資料シリーズ 職業能力開発総合大学校 基盤整備センター(2012~2016)(7) 「生涯職業能力開発体系の検証及び拡充計画」『生涯職業能力開発体系調査研究会』 委員会資料 職業能力開発総合大学校 能力開発研究センター(2002)(8) バーバラ・ミント:「新版 考える技術・書く技術」ダイヤモンド社(2012)(9) 平井孝志,渡部高士:「ビジュアルシンキング」日本経済新聞社(2012)(10) 公共職業訓練能力評価課:「生涯職業能力開発体系に係るアンケート調査結果」部内資料 高齢・障害・求職者雇用支援機構(2013)(11) 研修課:「平成25年度 職業能力開発体系を活用した事業主支援の推進に係る研修」アンケート調査結果 部内資料 職業能力開発総合大学校(2013)(12) 濱口桂一郎:『日本の雇用と労働法』日経文庫(2011)(13) 業種別職業能力開発体系の構築に関する調査研究会:「職業能力開発プロデュースガイド」『業種別職業能力開発体系の構築に関する調査研究』 調査研究資料No.136 職業能力開発総合大学校 基盤整備センター(2014)りである。第一の活用目的については,その目的や方針を明確にすることが必要である。第二の活用方法については,モデルデータから目的のデータへ作り変える方法が最も重要な課題である。第三の活用体制としては,施設内における協力・連携と人材育成が重要な課題である。今後は,体系活用に係る課題の対応を検討すること,さらに可能性を秘めている新たな活用(日本版NVQ,障害者や高齢者の職務再設計など)に対して,その目的や方針を見定めて活用方法を検討することが望まれる。<文 献>5.おわりに

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