2/2017
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つけているものが主要因である。以下,主要因(アンダーラインを引いたもの)についての検討結果を示す。ア 活用目的の主要因「体系の活用目的の検討」で示したように,誰に対して(対象)何を(体系データの位置づけ)どのように(活用段階)するかが重要である。この検討結果から,体系の活用目的は「事業主・内部労働者」に対して,「モデルデータ」を「仕事の見える化」に活用することが確認できた。イ 活用方法の主要因活用目的の主要因から事業主・内部労働者の支援に重点があることから,活用方法も事業主支援と公共職業能力開発の在職者訓練(能開セミナー)に重点が置かれる。その中で,特に苦労していることや不安要素をアンケート結果と照合すると,最も多いのが「モデルデータ」から「目的とするデータ」へのカスタマイズの方法である。事業主支援では,企業独自の職業の単位への設定,及び仕事のレベル設定である。公共職業能力開発では,能開セミナーにおける訓練単位への展開,及び訓練レベルの設定である。次に考えられる主要因は,企業との関わり方における信頼関係の築き方である。企業との関わりは,マニュアルに沿った型通りの対応に止まらずに,いかに信頼関係を得るかが要点と考えるからである。ウ 活用体制の主要因同じく各施設で苦労していることや不安要素をアンケート結果と照合してみると,真っ先に浮かぶのが施設内における協力・連携である。各施設の職業訓練指導員は,本来の訓練指導業務の他にも多種多様な業務に追われ,時間的なやりくりに奔走している様が窺われる。こうした中で,施設全体や科内の協力・連携体制をとることによって,いかに体系活用に充てる時間を見出すかである。また,体系活用にはかなりの専門性が必要である。それは,図4に示した様々な要因をクリアできなければならないからである。そのために,これを主業務とできる人材育成も大きな課題である。-51-(3)体系活用に向けた課題の検討体系活用に向けた課題の検討を特性要因図から整理した。さらに,特性要因図における「体系の活用促進」に大きな影響を及ぼしている主要因を絞り込んだ。この主要因を中心に,体系活用に向けた課題を体系データの見直し作業,及び見直し作業に係る施設ヒアリングを通して具体化していく。ア 活用目的の課題何かを行うに際しては,その目的や方針を明確にする必要がある。こうした問題意識で体系活用に関する目的を思い浮かぶままに書きだすと,①企業・団体等に対する職業能力開発体系の作成,②ジョブ・カード制度における評価シートの作成,③訓練ニーズ把握のための調査,④在職者訓練コースの設定,⑤離職者訓練におけるシステム・ユニット訓練など,多くの活用方法が考えらえる。しかし,体系データの見直しに係る施設ヒアリングでは,多くの活用に処するといっても,多様な業務に追われる中であれもこれもは無理とのことであった。これは,活用範囲が広すぎて体系の活用目的が曖昧であることの証左でもある。そこで,職業能力開発施策の動向と体系データの整備の経緯から,体系の活用目的を検討した結果,①と④に絞られることを確認した。今後の課題は,体系の活用を発展させるに当たり,その目的や方針をきちんと練り直すことである。直近の課題としては,②に関するジョブ・カード制度の改正(2015年)に伴う体系データの位置づけである。具体的には,以下のようになる。体系データがジョブ・カード作成のための汎用性のある基準に含まれた(2016年)ことから,今までの「モデル」に「基準」という機能が加わった。モデルはそれを基に作り直すこと,基準は共通の指標としてそのまま用いることであり,両者の活用目的は異なっている。にもかかわらず,体系データを汎用性のある基準にそのまま流用している。また,汎用性のある基準は,職業能力評価基準,モデル評価シート,技能検定などいろいろあるが,これらの内容や表現との統一性はない。ジョブ・カードの目的は,労働者が再就職や転職をする場合に,自らの職業能力を証明することである。この目的に沿うため

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