2/2017
39/60

「ポリテクセンターいわき」(以下「センター」という。)は福島県いわき市のほぼ中心に位置している。いわき市は昭和41(1966)年に14市町村が合併して誕生し平成28(2016)年で市制50年になった。面積は1,231km2(1)で平成15(2003)年までは全国一広い面積を有している広域都市であるがゆえに,地震・津波・原発事故・風評被害の影響が市内の各地域で異なることが震災復興状況を複雑化させている一因でもある。福島県東南部に位置し太平洋を望み,温暖な気候で,明治中期から常磐炭鉱を中心に産業が発達し小名浜(おなはま)港は石炭積み出しと水産加工や遠洋漁業の要港となった。昭和30年代にはエネルギー革命により常磐炭鉱が閉山したが,沿岸部を埋め立て臨海工業地帯として,金属・化学・製油所・電機・製紙工場が進出し産業振興を図ってきた。平成19年には工業製品出荷額が1兆円を超えたが,震災の影響によって8千億円台(1)に低下し,現在は9千億円台(1)に回復している。工業製品出荷額では東北6県では仙台に次ぐ東北有数の工業都市である。また,映画「フラガール」(2006年)の舞台「スパリゾートハワイアンズ」は常磐炭鉱跡から出る豊富な温泉がもとになっている。映画「超高速!参勤交代」(2014年),「超高速!参勤交代リターンズ」(2016年)*現 高知職業能力開発促進センター-37-もこの地域が題材である。センターは昭和35(1960)年に現在の地に設置され,常磐炭鉱の離職者訓練を開始し,その後この地域の産業の変遷と共に歩み東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に60年の節目を迎える。本レポートは,東日本大震災・原発事故の復興地域の渦中の地域産業に不可欠なものづくり人材育成の一翼を担うセンターとして,これまで震災復興訓練「建築CAD・リフォーム計画科」に派遣協力をいただいた全国の施設及び関係者の皆様に感謝を申し上げると共に,これから長期にわたる復興モデルの取組の実施にあたり全国の関係機関・関係者の皆様に,長期的・持続的にご支援ご協力をお願いしたく現状と課題をまとめたものである。いわき市は,地震・津波・原発事故・風評被害という4重の被害を受けているが,「被災自治体」という面と「復興拠点」「避難者受け入れ自治体」といった複雑性(2)をもったまま今日に至っているので,その一端を紹介する。(1)いわき地域の津波・地震被害同市は太平洋に全長約60kmに面し,震災前,夏は多くの海水浴客が訪れるところであったが,震災福島職業能力開発促進センターいわき訓練センター折笠 正弘・原  俊昭*木嶋  肇・長瀬 安信千葉職業能力開発促進センター高度訓練センター鈴木 良之・竹野 俊夫石田 光芳・佐渡 秀雄1.はじめに2.震災後の状況福島県沿岸地域の持続的ものづくり人材育成の一翼を担うために

元のページ  ../index.html#39

このブックを見る