2/2017
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利用でき,充分な機能を備えている。3.2.3 制御部制御部の役割は主にXBeeからのセンサ出力の情報を受信したものを監視し,ある閾値を超えたらMIDI出力を行うこと,つまり加速度信号をMIDI信号に変換することである。この制御部にはコントローラタイプのSH-2マイコンの評価ボードであるSH7144を用いた。開発当時,SHマイコンは他のマイコンと比べ動作速度が速いのが特徴であった。本装置ではXBeeで常に無線通信を行い,そこからMIDI出力までのタイムラグをできるかぎり小さくしたいと考え,動作速度の速いSHマイコンを選定した。制御部にはLCD・スイッチ・ボリューム,受信側のXBeeの基板・各スイッチ用の電源基板などが搭載されている。スイッチやボリュームは,この楽器のモード切替に使う。また,SHマイコンの外装として,レーザーカッターでカットしたアクリル材を組み合わせ,ケースを製作した。製作された制御部を図8に示す。制御部を動作させるためのプログラムも製作した。当初このシステムには,ヨーヨーの回転を検知するとその速さにより音の周波数を変化させたり,制御部に配されたスイッチにより音色を変化させたりといった,楽器に近い機能を持たせていた。しかしながら,ヨーヨーを回転させパフォーマンスしながら,楽器を鳴らしているうちに,開発者である星-34-野君は違和感を覚えたようである。本開発の目的は,ある程度ヨーヨーの経験のある競技者がさらに高い表現力を得るためのシステム構築にあったはずだったが数多の試作を経て,たくさんのヨーヨーを回転させ楽器の音を出音しても,ピンとくるものが皆無であったようだ。そこで,楽器のコンセプトを見直した。あらかじめ,楽曲のMIDIデータをプログラム上に組み込み,ヨーヨーの回転の有無・速さを楽曲のテンポの速さに変換する。ヨーヨーの回転が速ければ楽曲も早く進み,ヨーヨーの回転が遅ければ楽曲も遅く進む。回転していなければ出音されない。これによりあらかじめ用意された楽曲が,ヨーヨーパフォーマンスのテンポに合わせて出音される。これまでのヨーヨーパフォーマンスは,BGMに合わせて演技を行っていたが,この楽器を使えばヨーヨーパフォーマンスに合わせてBGMがついてきてくれるわけである。つまり本開発は,新しいヨーヨーパフォーマンスのためのツールを創り出したことになるわけである。3.2.4 試作機の経過これまでに最終的に製作したヨーヨー型電子楽器について説明してきたが,完成までに複数の試作機を製作したため,ここでは試作機の経過についても説明する。それぞれの試作機は適宜改良を行ったものであるため,順を追って表2にまとめる。ヨーヨーの筐体に関して,3Dプリンタで製作したり,市販品を利用したり,様々な検討があって,最終的にはポリアセタールを切削加工する方式に至った。最終版のヨーヨー本体を図9に示す。センサについても図8:制御部の全景図9:試作最終版のヨーヨー部全景

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