2/2017
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リスクそのものは事故を防ぐ能力も,また事故後の責任に対処する能力も有しない。許容リスクによって,リスクとして許容される条件で事故が発生すると考えなければならない。その場合,当然,「事故の前になぜ停止しなかったのか」に対する正当な理由が問われるからである。改めて,リスクは,事故前の停止を安全の原理として共有することで,“安全”に係っているのである。すでに述べたように,事故前の停止の失敗で事故が起こるという事実に基づけば,安全は事故前の停止を確保すること(安全の責任能力)である。私たちは,もともと“停止できないシステム”に安全はなく,“停止を許容しない安全管理”では責任が果たせないことを十分に承知している。大きな被害はもとより,小さな被害であっても人に傷害を与える以上,停止による事故防止が無視されてはならない。リスクアセスメントの結果としての残留リスクは,予め備えるトップの「停止の責任能力」の理由を明確に示すための指標とみることができる。改めて,事故は,事故前の停止原則に対する危険側誤りで生ずると考えることができるから,よって,事故前の停止の原則の限界で生ずる被害であるリスクは,非対称誤り特性の確保/改善で低減されると考えるこ-25-とができる。生産は正常時,停止を要さない。しかし,トラブルが発生し,その処理,故障修理等で人間による介入を依頼する。そのときは当然だが,システムは停止して人間を呼んで,待つのである。誤りが停止として生ずるのを安全上絶対と考えるのは,誤り(故障)をシステムは自分で修理できないから,人間に修理を依頼せざるを得ないからである。トラブルシュータとしての人間の掛け替えのない存在が人間だという関係で,人間を受け入れる条件として“故障→停止”が原理として演繹化されるまで構造化されていると理解される。一般に,操作の担当者に「停止」の義務を課すとする安全管理が導入される。これによれば,機械への接近は停止して行わねばならず,人の不安全行動とは,明らかに,「停止する前の機械に接近すること」と定義されるだろう。近年,自動車の製造ラインなどでは「止めて,呼んで,待つ」を義務とする作業管理が導入されているが,トップの責任能力によって構成される“停止管理システム”として重要な意味を持つ。機能を優先し,停止を避け,機能の信頼性(アベイラビリティ)の追求の結果がリスクとして評価され,リスクは,停止管理システムとしてトップの有表1 リスクアセスメントに基づく停止カテゴリの選択4.「停止」の責任能力とリスク5.リスクと停止カテゴリ

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