2/2017
22/60

的で共通的な科目として,図の中段「共通安全」の中央に記したリスクアセスメントや安全設計関係の技術を中核にした科目と,中段左右に記したマネジメントに関する科目がある。全ての領域に演習科目も配置している。下段に示した「個別安全」は,受講生個々人が,業務に関連あるいは興味がある科目を選択して履修する。技術を中核にした科目では,リスクアセスメントの基礎を教授する「リスク評価」,保護方策として安全確認型・基本安全原則を扱う「安全論理学」,「国際規格と安全技術」などを学んだ上で,電気安全,機能安全,機器設計法やその他関連した科目を学ぶことができる。機械側で設備対策が優先されることは述べたが,作業者がミスをしにくい設備とすることも大切であり,その基礎知見を与える「ヒューマンファクター」,労働安全の根幹である労働安全衛生法の基礎知識を与える「労働安全マネジメント」を準備している。また,安全の議論では,どこまでリスクを低減すれがよいのか,が問題となる。これには,数値的な目標があるわけではない。そうであるので,「いい加減に対応する」ことも可能である。このことから,危険源を真剣に同定する,その危険源に対して技術者として可能な限り低減を指向する態度,つまり技術者としての安全に対する倫理観が,安全確保の基盤となる。従って,本専攻では,技術者倫理を講義している。また,演習では次の内容を実施している。・課題に設定した機械(丸のこを教材としている。)を学生全員でリスクアセスメントを行い,その結果を相互に比較・討論する。(システム安全基礎演習Ⅰ)・安全装置に求められる要求仕様と既存の安全規格の記述について比較検討し,安全規格作成方法について理解する。(システム安全基礎演習Ⅱ)・認証を模擬的に経験して,リスクアセスメント-安全設計-安全立証書の作成のプロセスとその意味を理解する。(システム安全基礎演習Ⅲ)・企業の不祥事事例を題材に,組織のマネジメント,法的側面からその原因を検討し影響を最小限に抑-20-えるための対策を立案する。(システム安全基礎演習Ⅳ)さらに,国外・国内の著名な安全認証機関や研究機関に行き,そこで審査官などと議論して,主体的に学ぶ科目(システム安全実務演習B,C)や所属組織での問題を教員と共に,二年間で学んだ知見を基に解決を目指す,いわば本専攻の仕上げの科目ともいうべきシステム安全実務演習Aが用意されている。授業の体系と各科目の内容の詳細は,ホームページ(http://mcweb.nagaokaut.ac.jp/system-safety/)で公開されているので,必要に応じてご参照願いたい。授業形態は,講義科目で知識を習得し,それと各自の経験や立場に立った議論を重ねることだけではなく,演習科目により実際にその知識を使うことで,知識の活用法を学んでいる。まとめると,長岡技大の体系は,次のことを理解することを意図している。(1)リスクアセスメントにより危険源を見つけ評価することから,安全設計,さらに機械の危険情報の作成と譲渡時等に相手先へ情報を通知することまでが一連の流れであること。(2)安全設計においても,本質安全設計が最優先で,次に保護装置による安全確保の順があること。(3)安全は,機械が使用される際の安全だけではなく,設置,保全,修理等の全ての段階で確保できるようにすること。(4)適切なマネジメントにより,上記の(1)~(3)が実現できるようになること。一般論として,会社に勤務する者は経営のことを知っていた方がよいというのは事実だろうが,安全技術者は次のような点で,上司やトップが納得して安全を進めることを表明し,資源を投じるように説得しなければならないと考えている。つまり,経営者が販売する機械について判断するのは,主に市場性の観点からであるので,技術者は安全の必要性についても説明しなければならない。このとき,安4.社技術者がなぜ経営に関する知識を有しなければならないのか

元のページ  ../index.html#22

このブックを見る