2/2017
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④ 危険予知(KY)活動等日常職場活動に関する教育雇入れ時に新入者に対し,活動の概要や取り組み方法について教育を実施する。また,熱心な企業では,5年,10年などの一定期間後に再教育を実施している。さらに,危険予知活動以外にも,ヒヤリハット報告活動,4S(整理,整頓,清掃,清潔)活動など各種活動について同様に行われることがある。⑤ 危険体感教育近年,労働災害の発生を目の当たりにすることが少なくなり,労働災害の怖さや悲惨さが認識されず,危険感受性の低下が叫ばれている。このため,はさまれや巻き込まれ,墜落,感電,爆発などを体感する施設を設け,若手や新入者を対象に危険を体感させる教育を実施している(写真)。ここ10年くらいで増加している教育である。⑥ 異常処置作業などの社内資格者教育等機械設備の異常時の処置や低頻度の作業(非定常作業)など,リスクの高い作業について,経験年数や社内教育の修了を条件にした資格制度を設けている場合がある。資格者等が責任者の許可をもらってから作業にかかる制度(許可制度)を併せて行っている場合もある。また,表1で紹介した免許取得や技能講習修了がないとできない作業について,社内教育も修了しないと業務に就けないようにハードルを高くしているケースもある。さらには,安全衛生に熱心な事業場では,「安全マイスター制度」と称して,法令に基づく研修や自-13-主の研修の修了の程度に応じて,3段階でレベル付けする取組みを行っている。安全衛生スタッフはもとより,ラインの安全衛生担当者の力量を上げ,ライン管理の強化のために有効な制度と考える。これらの教育は,⑥を除いて外部の機関を利用して行われることも少なくなく,紹介した教育以外にも,例えば,ヒューマンエラー防止対策など多種行われている。中災防でもこれらに関する各種教育を実施しているので,こちらも必要に応じて活用いただきたい。ここまでは企業で一般的に行われている安全衛生教育の現状について概観した。ここからは,企業を取り巻く環境の変化を考慮して,今後の安全衛生教育の力点の置き方について考えてみたい。3.1 舵取りの変更(規制型から自主対応型へ)米国や英国をはじめとした先進国では,日本と同様に1970年代に本格的な労働安全衛生に関する法律を制定した。自他共に認める労働安全衛生分野のリーダー国である英国では,1974年に制定した労働安全衛生法の制定に先立ち,安全衛生を所掌する労働大臣に任命された7名の委員からなる委員会(委員長名をとってローベンス委員会)において,主として当時の安全衛生分野における行政上の問題について討議した。この委員会の報告書(ローベンス報告)では,法律や監督により安全衛生向上を目指すことに疑問が呈され,法律の複雑さや時代の進歩に合わせた法律の制定・改廃の難しさが言及された。これらの問題意識から,企業の自主対応への移行が提言された[4]。これにより英国では「もぐらたたき」となりがちな法規制だけでなく,自社の実態に応じて取り組むための自主対応が重要であることを踏まえた労働安全衛生法が制定された。日本では,1972年に施行された労働安全衛生法の目的の中に「自主的な活動の促進」が盛り込まれて写真 危険体感教育の実施例中災防が実施する危険体感教育の様子3.安全衛生教育とこれからの力点

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