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規則や特定化学物質障害予防規則等の省令,その他,指針,通達などで詳細が定められている。これらの安全衛生関係法令はしばしば,「多くの犠牲の上にできた法律」といわれる。義務化されている安全衛生教育も同様に,過去,頻発する労働災害の要因の裏返しとして規定されているものがほとんどといえる。なお,職長教育や技能講習,特別教育は,労働基準監督署ごとにある労働基準協会や,登録教習機関で実施されている。また,大手企業であれば,特別教育を中心に自前で社内教育しているところもある。中災防が運営する,東京と大阪にある安全衛生教育センター[3]は,労働安全衛生法第63条に基づき,労働安全衛生に関する指導者や専門家を養成することを目的として,それぞれ1973年,1978年に労働省(現厚生労働省)により設立された教育施設である。職長教育や雇入れ時教育,作業内容変更時教育,特別教育等の各種講師養成研修等を実施しており,これまでに延べ20万人以上の方が受講されている。必要に応じてぜひ活用いただきたい。法令に基づく研修は文字通り必須の教育であるため,労働基準監督署の指導対象になることは十分に考えられる。労働災害が発生した際に,これらの-12-対応ができていないことが一因となっている場合には,書類送検されたり,民事訴訟時に事業者の責任が大きくなったりすることが予想される。2.1.2 事業者による自主的な安全衛生教育先人たちが約100年前に始めた産業安全運動に端を発する「安全第一」の取り組みはいまでも脈々と引き継がれており,法令に基づくもの以外の自主的な教育も大手企業を中心に実施されている。企業によって内容は異なるが,筆者の経験を踏まえ,特に実施されていることが多いと考えられる主な教育について紹介する。① 階層別教育新規に部長や課長,係長などに就いたときに実施する教育。安全衛生上の役割・責任や安全配慮義務,安全衛生のライン化,リスクアセスメント,メンタルヘルスケアなどを内容にすることが多い。また,若手教育と称して,入社後5年,10年などの区切りに教育を実施したり,ベテラン教育と称して,20年,30年などの節目に,自身の安全衛生の取り組みについて振り返りを行い,今後の行動に役立てたりといった教育も実施されている。② OSHMS(労働安全衛生マネジメントシステム)教育計画,実施,評価,改善(PDCA:Plan-Do-Check-Act)の一連の過程を定めて,安全衛生水準をスパイラルアップさせるOSHMSを導入する企業が増えている。この取り組みの中で必要な役割,責任などについて教育する。OSHMSでは内部監査も必要なため,内部監査者の教育も実施されることが多い。③ リスクアセスメントに関する教育職場のリスクを積極的に抽出して,リスクの除去・低減につなげるための取り組みであるリスクアセスメントは,危険性又は有害性の高い一部の化学物質について実施が義務化されており,その他,作業に関するリスクアセスメントの実施が努力義務化されている。各企業では,リスクアセスメントについて自分たちでやり方を決めるとともに,第一線の作業者など全員参加で実施することが有効なことから,全従業員に対して教育を実施するところも少なくない。表1 法令に基づく安全衛生教育等

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