1/2017
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図3 チェロの演奏姿勢・大きく重いことから携帯性や保管性が悪い・音量が大きく低周波の振動も伴うため演奏環境が制限される・楽器購入,調整,弦交換などの維持のためのコストが高いまず携帯性における欠点について詳細を説明する。大きさは楽器本体では全長約1250mm,FRP(繊維強化樹脂)製のケースに入れるとなると約1300mmと楽器としてはかなり大型である。また重さは個体差があるものの楽器本体で約5kg,さらに-51-約5kgのFRPケースに入れて運搬となると合わせて10kgほどの重量になる。人が背負って持ち運ぶのが大変であるのはもちろん,車や公共交通機関での移動も容易ではない。まして航空機で移動する場合に至っては通常の手荷物として持ち込めず,また楽器の安全上貨物としても預けられないため,多くの場合別途1席分の料金を支払いその席に楽器を固定する必要が生じる。また保管に関しても,大きなスペースを必要とするだけでなく,楽器が木製で温度・湿度変化や紫外線に弱いため専用の場所を用意しなければならない。以上を鑑みると演奏者にとって負担が大きい。次に演奏環境の問題点について詳細を述べる。チェロの音量は非常に大きく約85dBと言われており,これはギターをかき鳴らしたときやピアノの音量に匹敵する。さらにエンドピンによって引き起こされる床や建物の共振も大きな問題となるため,周囲への騒音や振動が憚られる場所(マンションや集合住宅など)では練習することが非常に困難である。また椅子に座り演奏する楽器であるため専用の椅子が必要であったり,弓を扱うためその椅子を中心に半径1メートルは障害物のないスペースが必要であったりとやはり演奏者にとって負担である。最後に維持費が高い点について述べる。チェロを始めるにあたり,楽器本体は入門用ならば最低でも20万円,標準的な価格として80万円ほどかかってしまう。弓は別途購入する必要があり,初心者用であっても数万円から数十万円の決して安価でない価格帯で市販されている。また楽器に付随して必要な楽器ケースや松脂,エンドピン削り用のやすり,クロスやチューナなども用意しなければならない。演奏に必要な一式を揃えた後も消耗部品の交換やメンテナンスが必要である。弦は1本5千円~1万円程度で半年に1回は換えるべきと言われ,弓の毛替えは1回約1万円でこちらも半年に1回は換えるべきとされている。また弦と楽器との関係はかなり微妙なバランスで保たれているため良い響きを保つためには楽器店へ定期的なメンテナンスに出すことが推奨される。以上よりチェロの維持のためだけに必要なコストは,初期コストを除いても年間約10万円は

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