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期中等教育を終えた子どもたちが応募し,面接や試験を受けて採用されると企業等と職業訓練の契約を結ぶ。当然,多くは未成年であるから,実際には保護者と契約を結ぶことになる。企業は見習い訓練生を受け入れることが決まると,職業学校に見習い訓練生のリストを提出する。工業系企業であれば工業系の職業学校,商業系企業であれば商業系の職業学校にリストを提出し,それによって見習い訓練生は同時に職業学校の生徒としての身分を得ることになる。企業内訓練は多くの場合,週に3~4日,訓練指導者あるいは親方の資格を持つ者によって行われる。企業等での職業訓練には,商工・手工業会議所,経営者団体,労働者団体,連邦職業教育研究所(頭字語からBIBBと呼ばれる)が関与している。一方,職業学校では,週に1日~2日,あるいは一定期間に集中する形で,職業学校の教員が授業を行う。職業学校では職種に応じた専門の教科と,一般の教科の授業が行われる。職業学校を監督するのは,州の教育担当省と学校を所轄する地域当局である。職業訓練の期間は職種によって異なるが,2年~3年半のカリキュラムを上首尾に終えると,商工・手工業会議所等で修了試験を受ける。修了試験に合格した者に渡される証書が,専門労働者(Facharbeiter),あるいは職人(Geselle)の資格である。この資格を手にすることで,初めて正規の労働者として企業に就職することができる。見習い訓練の間は,あくまでも見習い訓練生としての雇用にすぎず,専門労働者の資格を手にして初めて一人前の職業人となる。また,職業学校においては,学校教育の修了証書が付与される。ドイツの高等教育機関には,大きく分けると2つの種類がある。それは,学術的な教育研究を行う大学(wissenschaftliche Hochschule,以下「大学」と総称する)と,実践指向の専門教育を行う専門大学(Fachhochschule)である。大学の最たるものが総合大学(Universität)で-44-あり,工科大学,芸術大学も学術的な大学に位置づけられている。博士の学位授与権を有するのは大学だけである。多くの総合大学は長い伝統を有し,人文社会科学から自然科学まで幅広い分野の学部を置いている。工科大学は“Technische Hochschule”あるいは“Technische Universität”と呼ばれるが,ドイツで工学が高等教育の一分野に加えられたのは19世紀後半以降であり,総合大学に工学部は設けられていなかった。現在でも工学部の多くは,ミュンヘン工科大学やベルリン工科大学などの工科大学に設置されている。一方,専門大学は1960年代末から1970年代初めに設けられた,新しい種類の高等教育機関である。大学(Universität)が理論・学術指向の教育研究と基礎研究に重点を置いているのに対して,専門大学(Fachhochschule)は実践指向の教育と応用研究に特徴をもつ。専門大学は英語で“University of Applied Sciences”と称され,この名称が諸外国において定着してきた結果,近年では「専門大学」に代わってこの“University of Applied Sciences”をドイツ語に直した「応用科学大学」(Hochschule für Angewandte Wissenschaften, HAW)と称する機関が増えている。大学,専門大学に加えて,中等教育後の第三段階の教育機関として職業アカデミー(Berufsakademie)が幾つかの州に設けられている。職業アカデミーは高等教育機関ではなく学位の授与権をもたないが,アビトゥーア取得者を対象に中等教育後の段階で,企業等での実践職業訓練と学修機関での理論的な学修を組み合わせたデュアルシステムに類する職業教育訓練を提供している。ドイツにおいて,高等教育は専門職業教育と位置づけられ,高等教育の修了証書,すなわち学位は,法的にも専門職業資格と解されている。このことを教育資格と職業資格という2つの観点から見ると,図1で茶色に色付けされている部分のデュアルシステムを終えた若者たちが職業資格を手にするのに対して,黄色に色付けされている学校種は,全て普通教育学校である。そこでは普通教育の授業が行われ,ギムナジウム上級段階もまた大学に5.高等教育

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