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四国職業能力開発大学校 岩永 禎之試作では問題なかったのに量産に入ると問題がおきる,出荷検査で合格したにもかかわらず市場でクレームが発生するといったことは良くおきる。そのような問題が発生したあとに解決することを「モグラたたき」と呼び,このために技術者が時間をとられ,本来の開発や生産に集中できないことが少なくない。問題が発生したときの技術者の言い訳は「想定外」である。想定外という言い訳が通用しないものづくりの世界では,未然防止がますます要求されている。未然防止のために,「問題の発生しにくさ」言い換えれば「機能の安定性」を設計するのが品質工学(タグチメソッド)である。品質工学は,田口玄一が創出した考え方で,研究開発,製品設計,工程設計や工程管理を効率的に実現する手法である。汎用性の高い手法であり,ほとんどの技術課題に適用が可能である。機械,電気,化学,薬学,医学,食品,生活,計測やソフトウェアなど,様々な技術分野での成功事例がある。 近年,品質工学の手法が多くの企業で用いられるようになった。また,重要性,即効性から,今まで品質工学に取り組んでいなかった香川県内の企業が導入を試みようとしている。このような中で四国職業能力開発大学校(以下「四国能開大」と記す)および四国能開大が事務局を努める香川品質工学研究会が地域企業の技術力向上のために実施している,品質工学の教育と普及に関する様々な取り組みを報告する。-17-業界,業種を超えて会員が相互研鑽できる場を作り,地域企業の技術力向上と,若手技術者の育成を目指して,平成24年度に「香川品質工学研究会」を四国能開大に設置した。平成25年度より企業に所属する会員も参加している。月1回複数の企業からの技術者,技術コンサルタントと四国能開大の教員が参加して,多彩な分野の事例をメンバー全員で検討し,会員相互のレベルアップと品質工学の普及活動を行っている。品質工学を学び始めたばかりの初学者から,企業で実践している方まで,多様なメンバーがアットホームな雰囲気で取り組んでいる。品質工学は,幅広い分野での応用が可能であり,経営者,管理者,技術者が一丸となって取り組むことができる技術開発の方法で,日本のみならず世界の国々において注目されている手法である。この品質工学を実際の技術課題に適用するためには,事例研究を通してその考え方を正しく理解することが重要である。香川県内の産学の技術者有志で運営している当研究会の取り組みを広げて行きたいと考えている。四国能開大では,平成21年頃から品質工学のパラメータ設計に関する能力開発セミナーを実施してきた。平成25年4月に香川県産業技術センターおよび香川県内企業T社(建設機械製造業)より,「一般1.はじめに2.香川品質工学研究会3.能力開発セミナー品質工学の教育と普及に関する取り組み事例について

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