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図1 構成ブロック図岐阜職業能力開発促進センター 鹿子 治廣「なぜ指導員のビートは美しいのか」,「溶接電流や溶接速度に変わりはないように思うのだが何が違うのか」,「上達するには繰り返し練習するしかないのか」という訓練生の素朴な疑問が本装置を製作するきっかけとなった。T継ぎ手部の溶接においてトーチをローリングさせながら移動させていく必要がある。このときの手首の動きは初心者にとっては習得に少々時間がかかる。動きをとらえる方法としてはビデオ撮影があるが細かい動きは捉えにくい。ワンボードマイコンと姿勢制御に利用されているジャイロ+加速度センサーを使用することで比較的容易に手首の動きを数値化,これをグラフ化して手首の返し速度や角度を知ることは,上達の近道となると予測した。センサーを溶接作業用の皮手袋に装着,ワンボードマイコンとフリーソフトを組み合わせたモーションキャプチャーを製作したので紹介する。本稿で紹介する装置は,ジャイロ+加速度センサーを使用した角度センサーをトーチを握る手の甲に取り付け,握り角度をワンボードマイコンで演算し,結果をパーソナルコンピュータでグラフ化,波形を観察することによって溶接技能の習得を支援する装置である。-30-開発期間をできるだけ短くするため,本装置ではプロトタイピング用のマイコンモジュールとして人気の高いArduinoを選択した。Arduinoとは,Atmel社がリリースしているマイクロコントローラと最小限の周辺回路を備えたワンボードマイコンである。特徴としてはオープンソースハードウェアであり,ハードウェアの設計情報から開発に使うソフトウェアも公開されている。Arduinoは様々なセンサーからの信号を受け取ることが可能であり,センサー情報を利用した製品が数多く開発されている(1)。評価試験ではArduinoの開発ツールに組み込まれているシリアルプロッターでグラフ化した。グラフ化するデータの出力プログラムの変更のみでプログラム作成やコンパイルエラーに悩まされることなく試験できた。さらに,3軸のデータを3D散布図で表現することによって,一目で手首の動きがイメージできることを確認した。3-1 構成構成要素のブロック図を図1に示す。1.はじめに2.概要3.装置の構成と特徴TIG溶接モーションキャプチャーの製作

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