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図8 NBD暖房システム模式図2)図9 吸光度と陽光照射時間の関係なシステムである。またそれを繰り返し使用できる特徴をもっている6)。本研究では暖房システム等への応用を目的として,NBD誘導体を用いた光エネルギーの変換・蓄熱性能に関する基礎的検討を行った7)。3.2 NBDの光原子異性化反応NBDに太陽光を照射することで分子内の二重結合の原子価異性化反応が生起し,高歪みな結合状態のQCが生成する。生成したQCは触媒作用により逆異性化することで元のNBDに戻り,この時にQCが放出する熱量は96[kJ/mol]になる((1)式)。単位重量に換算すれば1043[kJ/kg]と高い蓄放熱性を持っている。図8にNBD暖房システムの模式図を示す。3.3 光原子異性化反応NBD誘導体は水溶性のある3-フェニル-2, 5-ノルボルナジエン-2-カルボン酸(NBD-ph)を用いた。溶媒としては水酸化ナトリウム12mM水溶液および有機溶媒のテトラヒドロフラン(THF)を使用した。所定濃度のNBD誘導体を溶媒に溶解させた後,太陽光または26W紫外線(UV-B)蛍光ランプを所定時間照射しQCへの異性化反応を行った。異性化反応は,液体クロマトグラフィーのUV検出器(東ソー:HPLC用 UV-8010)を用い,UV-14-スペクトルの吸収ピークから定量を行った。NBD-ph溶液における吸光度の推移を陽光照射時間ごとに整理して図9に示す。陽光照射時間の増加に伴い,NBD-ph水溶液の290nm吸光度が減衰し,陽光によるQC誘導体への異性化が確認でき,30分で異性化率100%が達成できた。3.4 逆異性化反応QCの逆異性化反応は,コバルト(Ⅱ)テトラフェニルポルフィリン(Co-TPP)触媒を添加する方法6)を試みた。Co-TPPを添加して逆異性化反応を行った結果を図10に示す。NBD-phの異性化により消失していた290nm吸光度の吸収ピークが再現し,QCの逆異性化が確認できた。異性化したQC溶液に飽和Co-TPP溶液を加え,NBDへ逆異性化させたときの放熱量を測定した。図11に逆異性化による温度上昇とNBD-ph濃度の関係を示す。放熱量は(2)式で定義した。温度上昇がNBD-ph濃度に依存し,236mMの溶液で約9.4[K]の温度の上昇を確認できた。図12に放熱量とNBD濃度の関係を示す。破線はNBD蓄熱量の既値(96kJ/mol)でありNBD濃度が高くなるほど,単位モル当りの比放熱量は減少した。Co-TPP濃度に対するNBD濃度が高いほど効率が下がっていることから放熱量はCo-TPP濃度に依存していると考えられる。            (2)

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