3/2016
8/38

図7 パスの使い方テキスト図8 パス測定の実技指導の様子-6-仕上げ加工では,超硬工具を用いて切削量の微調整を行うことは難しいため,ハイス工具を使用し,φ0.05mmずつ切り込みながらパス測定を行い,目標寸法まで加工した。参加者全員が仕上がり寸法を目標値に一致することはできず,短期間で感覚を身につける難しさを理解した。3.5 切削工具の研ぎ方の技能伝承若手指導員が中心となり運営している職業訓練施設では,切削工具の研ぎ方をベテラン指導員から学び,自ら練習を行い,習熟したのちに指導を行うという理想的なプロセスを経験することができず,自らの技能に自信を持って訓練担当をできない例もある。この問題を解決するためにH27年度「顔ねっと機械加工」では,関西職業能力開発促進センターで使用している工具研削のテキストを共有し,平成22年度に行われたねじ切りバイトの研ぎ方の復習と,新しく加えたドリル研削等の技能伝承を行った(図9)。また,工具研削の様子を図10に示す。工具の研削技能は,「顔ねっと」に参加するだけで身につけられるような簡単なものではない。ただ,工具を研ぐときの知識,またその姿勢や作業目線,作業者の手の置く位置などをベテランの指導員から直接指導してもらうことで,その後の自己研鑽の効率は格段に上がる。何より,「顔ねっと機械加工」の本来の目的である,困ったときに相談できるベテ3.4 パスの扱い方の技能伝承パスとよばれる測定器は,現在ではほとんど使用されていない。デジタル化された様々な測定器がある中で,パス測定に関する技能伝承を行う理由は,単に測定器の名称や扱い方を習得するだけではなく,測定技能や機械加工に対する技能者の感性を磨くことが目的である。パスでの測定は手に伝わるわずかな感覚が大事である。ベテラン指導員は,パスを用いて材料を測定する際,手に伝わる感覚でφ0.005mmほどの差を感じ取る。まだ感覚を養えていない初心者は,毎回同じ測定器を使用して訓練することが必要である。そのため,平成26年度「顔ねっと機械加工」の参加者は各自のパスを用意し,自分の使いやすいように先端を研削,焼き入れしてから使用する事とした。ベテラン指導員と共に作業を行いながら,そのわずかな感覚を実際に経験することで,様々な加工の「勘」として応用することを目的とし作業に取り組んだ。実施にあたって,パスについての知識や測定の仕方を知らない指導員が多いため,まずはパスの種類や扱い方についての説明と指導を受けた。パスの扱い方で使用したテキストの一部を図7に示す。次に,外パス・内パスを用いて実際に円筒物の測定に関する指導を受けた。参加者全員がマイクロメータを使って実際に測定した値と,パスを用いて測定作業を行った値との比較を行った。図8に測定の実技指導の様子を示す。次に,実際に加工を行いながらパス測定をした。

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る